欧州中央銀行(ECB)は26日、ユーロ圏の主要130銀行を対象に実施した包括的な健全性検査の結果を公表した。資本不足で“不合格”となったのは25行で、資本不足額は計250億ユーロ。うちイタリアなど南欧を中心とする13行が資本増強を求められる。
来年1月にユーロを導入するリトアニアを含むユーロ圏19カ国の主要銀行が対象の同検査は、ストレステスト(健全性審査)、資産の質を精査する資産査定の2つ。各行の13年12月末時点の資本、資産、不良債権などのデータに基づいて審査した。
ストレステストでは欧州委員会の最新経済予測に基づく「基本シナリオ」と、景気後退や金融市場の混乱といった大きな逆風にさらされる場合を想定した「逆境シナリオ」の2つを設定。各行は中核的自己資本比率が基本シナリオの下で8%、逆境シナリオ下で5.5%を上回ることを求められる。これと資産査定の結果を総合し、“合格”か否かを判定する。
“不合格”となった25行のうち12行は、14年に入って総額150億ユーロの増資を実施したことから、すでに資本不足が解消した。残る13行が今後、総額100億ユーロの増資を求められる。
この13行は伊バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(MPS)、バンカ・カリッジ、バンカ・ポポラーレ・ディ・ミラノ、バンカ・ポポラーレ・ディ・ヴィチェンツァ、ギリシャのユーロバンク、ギリシャ・ナショナル銀行(NBG)、フランス・ベルギー系のデクシア、キプロスのヘレニック銀行、アイルランドのパーマネントTSB、ポルトガルのバンコ・コメルシアル・ポルトゲーズ、オーストリアのオーストリア人民銀行、スロベニアのノバ・リュブリャナ銀行(NLB)、ノバ・クレジトナ・バンカ・マリボール(NKBM)。資本不足額は伊3位の銀行であるMPSが21億1,000万ユーロで最高だった。
これらの銀行のうち、ギリシャの2行、スロベニアの2行とデクシアについては、すでに増資計画などを固めていることから、残る8行が2週間以内にECBに増資計画を提出し、9カ月以内に実施することを求められる。
EUでは2010年から銀行のストレステストを実施してきたが、自己資本比率に絞り込んで審査が行われた結果、銀行の健全性を的確に把握することができなかった。1回目のテストでは、合格と判断されたアイルランドの銀行が後に資本不足に陥り、同国がEUと国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請する事態に追い込まれ、テスト結果への市場の信用を失うという苦い経験を味わった経緯がある。
このため、ユーロ圏の銀行監督をECBに一元化する制度が始動する11月4日を前に実施された今回の検査では、ストレステストと同時に銀行の資産の質も精査し、各行が抱えるリスクを徹底的に洗い出した。
資産査定では、対象銀行の不良債権額が申告より1,360億ユーロ多いことが判明。これによって資産額が480億ユーロ切り下げられた。総額250億ユーロの資本不足額のうち、同要因によるものは110億ユーロに上った。