欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/3/7

EU情報

ウクライナ、EUに加盟を申請

この記事の要約

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、EUに加盟を申請した。ロシアの軍事侵攻にさらされる中、特別な手続きを適用し、早期に加盟できるよう要請している。EUは3月10、11日に開く非公式首脳会議で同問題について協議する […]

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、EUに加盟を申請した。ロシアの軍事侵攻にさらされる中、特別な手続きを適用し、早期に加盟できるよう要請している。EUは3月10、11日に開く非公式首脳会議で同問題について協議する予定だ。

EUとウクライナは、自由貿易協定(FTA)を柱とする連合協定を2014年に締結。17年に協定が発効した。ただ、同協定がウクライナのEU加盟につながり、これに反対するロシアとの軋轢が生じる恐れがあるとして、同協定がウクライナの加盟に直結せず、EUがウクライナの防衛義務を負わないことなどを確認する文書が採択された経緯がある。

ロシアの侵攻によって状況が激変したことから、ウクライナは加盟が可能になったと判断し、申請を行った。EU側も欧州委員会のフォンデアライエン委員長が27日、欧州メディアのインタビューで「ウクライナがEUに加わること望んでいる」と述べ、将来の加盟を支持する意向を表明していた。

EUへの新規加盟は通常、まず対象国を加盟候補国として認定した上で、加盟交渉を開始し、少なくとも数年間をかけて協議を行った末に決まる。加盟候補国として認定されるまでにも相当の時間がかかる。ウクライナはこうした手続きを簡素化し、すぐに加盟できるよう要請している。

EU内ではポーランド、チェコ、バルト3国など中東欧の8カ国の首脳がウクライナの加盟を支持する共同声明を同日に発表。すぐに加盟交渉を開始するようEUに呼びかけた。

仮にこのような特別手続きが適用されたとしても、加盟交渉では対象国が政治体制や汚職対策などでEUが求める基準を満たすことを確認する必要がある。これを省いて即時に加盟を認めると、加盟候補国となりながら加盟実現が遅れている西バルカン諸国が反発しかねない。このため、早期の加盟は難しい。ゼレンスキー大統領の加盟申請には、こうした事情を承知の上で、ロシアとの停戦交渉で取引材料のひとつにしたいという思惑もあると目される。

一方、ウクライナに続き、モルドバとジョージアが3日、EUに加盟を申請した。ロシアのウクライナ侵攻を機に、旧ソ連邦諸国のロシア離れ、親EU路線が加速する格好となっている。