欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/4/11

EU情報

EUが対ロシア制裁第5弾を正式発表、8月から石炭輸入禁止

この記事の要約

欧州委員会は8日、ロシアからの石炭の輸入禁止などを柱とする対ロ追加制裁の詳細を正式発表した。木材やセメントなどの輸入も禁止するほか、ロシア船舶のEU域内への入港禁止、主要4銀行との全面的な取引禁止などを盛り込んだ。ロシア […]

欧州委員会は8日、ロシアからの石炭の輸入禁止などを柱とする対ロ追加制裁の詳細を正式発表した。木材やセメントなどの輸入も禁止するほか、ロシア船舶のEU域内への入港禁止、主要4銀行との全面的な取引禁止などを盛り込んだ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、米国や日本などと協調してプーチン政権への経済的圧力をさらに強める。

第5弾となる対ロ制裁は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊でロシア軍の撤退後、民間人とみられる多数の遺体が見つかったことを受けた措置。欧州委が5日に制裁案を公表し、加盟国が7日の大使級会合で承認。8日付のEU官報に掲載し、制裁を発動した。

石炭の輸入禁止は4カ月の準備期間を経て、8月第2週から全面施行される。既存の契約はそれまでに解除しなければならず、新規契約は8日から締結できなくなる。欧州委によると、ロシアからの石炭輸出でEU向けは約4分の1を占め、今回の措置でロシアは年間80億ユーロの収入を失うとみられる。

新たな制裁では石炭以外に木材、ゴム、セメント、肥料、キャビアなどの海産物、ウオッカなど、55億ユーロ規模の幅広い製品の輸入を禁止する。EUはすでに鉄鋼などの輸入を禁止しており、今回の措置と合わせるとロシア産品の輸入が金額ベースで最大20%減少するとみられている。

一方、量子コンピューターや最先端の半導体、ソフトウェア、精密機器、ジェット燃料など、100億ユーロ規模に上るEU製品の輸出を禁止する。

また、食品や医薬品、エネルギーなどの輸送を除き、ロシアの船舶がEU域内に入港するのを禁止するほか、VTBバンクなど、ロシアの主要4行との取引も全面的に禁止する。

さらにEU内の資産凍結やEUへの渡航を禁止するリストに富裕層や軍関係者ら217人を加えた。この中にはプーチン大統領の娘2人や、ロシア最大手銀行ズベルバンクのグレフ最高経営責任者(CEO)などが含まれている。

追加制裁の検討にあたり、EUは石油や天然ガスの禁輸についても水面下で議論したが、欧州委は加盟国から全会一致の支持を得ることは困難と判断し、合意が得られそうな石炭に対象を絞った。EU統計局によると、ロシア産エネルギーに対するEUの依存度は天然ガスで41%と最も高く、石油が37%、石炭は19%となっている。

欧州委のフォンデアライエン委員長は7日の記者会見で「次のテーマは石油だ」と述べ、石炭に続いてロシア産石油の輸入禁止に向けて準備を進めていることを明らかにした。