2004年の「オレンジ革命」の立役者の一人で、「美しすぎる」トップ政治家として知られたティモシェンコ・ウクライナ前首相(50)が苦境に立たされている。大統領選に出馬したものの昨年2月の決選投票で破れ、3月に総辞職を余儀なくされた彼女だが、新政権の下で国家資金の不正流用疑惑で検察の取調べを受けているのだ。ティモシェンコ氏は、野党陣営を崩すための政治的陰謀として、嫌疑を否定している。
\ティモシェンコ氏は、エネルギー効率化などの環境対策に充てられるはずの2億1,000万ユーロ相当を年金資金に流用したとされている。ただ、検察による捜査が恣意的なものである可能性は強い。ティモシェンコ内閣の閣僚であった、ルツェンコ前内相、フィリプチュク前環境相、ボンダル前交通相、コルニイチュク前副法務相、イヴァシュチェンコ前副国防相は捜査目的で勾留中。ダニリシン前経済相はウクライナ当局の逮捕令状に基づきチェコ・プラハで逮捕されたが、政治的理由による亡命が認められて同地に滞在中だ。当のティモシェンコ氏は、取調べのため、キエフの外へ出ることを禁止されている。
\糸を引いているとみられるのが、オレンジ革命の原因となった2004年の大統領選挙で破れたヤヌコビッチ現大統領。「あのときの仇」と思ったかどうかは別として、強権的なクチマ元大統領の正当な後継者である彼にとっては、「民主主義」を掲げるティモシェンコ氏ら野党勢力が邪魔なことは確かだろう。
\しかし、ティモシェンコ氏も黙ってはいない。美ぼうの政治家という話題性を大いに利用して、国外メディアにアピールし始めた。ドイツ版『フィナンシャル・タイムズ』(1月24日付)のインタビューに応え、「ウクライナは民主主義を取り戻さなければなりません。そのために私は戦います」と現政権に宣戦布告。「ウクライナ人が自由を愛する民族である事実は歴史的に証明済み。だからこそ、ヤヌコビッチは総力を挙げて野党を骨抜きにし、飼いならそうとしているのです」と主張した。また、ポーランドとの共催の欧州サッカー選手権大会は資金洗浄の道具として使われようとしているとし、「現に、入札なしに3社目の総合建設業者が工事を受注しましたが、この会社には現閣僚が出資していると言われています」と訴えた。また、欧米諸国が「ようやくウクライナの状況を正しく認識し始めた」と指摘し、国際世論がウクライナ現政権に対する圧力を強めることに期待感を示した。
\オレンジ革命の「ジャンヌ・ダルク」と呼ばれたティモシェンコ氏。国外メディアを味方につけて、再び旋風を巻き起こせるのだろうか。勝つにしても負けるにしても、美ぼうの彼女の行く末はメディアを通じて追っていけそうだ。
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