2010/11/10

コーヒーブレイク

ホドルコフスキー裁判は民主主義の試金石~ロシア

この記事の要約

ロシア最大の石油会社であったユコスのホドルコフスキー元社長ら2人に対する裁判で2日、被告による最終陳述が行われた。有罪判決が確実視されるなかで同元社長は、今回の裁判がロシア国民の運命を左右するとし、国の未来のためには官僚 […]

ロシア最大の石油会社であったユコスのホドルコフスキー元社長ら2人に対する裁判で2日、被告による最終陳述が行われた。有罪判決が確実視されるなかで同元社長は、今回の裁判がロシア国民の運命を左右するとし、国の未来のためには官僚体質の変革が必要という信念は変わらないと語った。

\

起訴されているのは、ホドルコフスキー氏とユコス親会社(当時)のレベジェフ元会長で、2人とも2003年に脱税、横領などの罪で8年の懲役刑判決を受けて服役中の身だ。この有罪判決は、新興財閥の影響排除をねらうプーチン大統領(当時)の政治的動機に基づいたものだったという見方が一般的。今回も罪状として石油横領・資金洗浄(マネーロンダリング)が挙げられているものの、来年と再来年の選挙を前に、ホドルコフスキー氏の収監期限を延ばす思惑があるとみられている。

\

無罪を主張するホドルコフスキー氏は最終陳述で、「ロシアは過去20年間、発展に向けた数多くのチャンスを見送ってきた。その結果、警察の恣意や、汚職官僚による司法の悪用が横行し、私的財産権はいまだに確立していない。私は自分の国を恥ずかしいと思う」と述べた。また、「民主主義への歩みは、足踏み状態というのがいいところだ」とし、「経済の近代化を担うのは誰なのか。検察局なのか。警察なのか。それとも諜報機関か」と問いかけた。そして、裁判官に対しては、「この裁判の判決は被告2人の運命だけでなく、ロシア国民すべての運命を決定する」と、その歴史的重要性を訴えた。法廷では同氏の陳述が終わると、傍聴に集まったホドルコフスキー支持者や反体制派ジャーナリストからの拍手喝さいが沸き起こったという。

\

今回の裁判は国内外の民主勢力から、ロシアの司法国家としての成熟度を計る試金石と位置づけられている。万が一、無罪判決が出れば、政治の転換を意味することになり、この点からも注目が集まる。ただ、ロシアにおける言論弾圧は公の秘密であり、6日にも大手経済新聞『コメルサント』のカシン記者が自宅前で暴行を受けて重態となる事件が起きたばかり。この事実からも、ロシアの民主主義の夜明けは遠いと言えそうだ。

\