ブルガリアでは、ヨーグルトはただの食品ではない。文化遺産なのだ。同国原産の乳酸菌「ラクトバチルス・ブルガリクス」を使ったヨーグルトは、胃腸の働きを整えるだけではなく、二日酔いやニキビにも効き、寿命を伸ばす「副作用」さえあると信じられている。
\ブルガリアで食事をすれば、何らかの形でヨーグルトも一緒に食べるのが普通。500ミリリットルより小さい容器で売られることはなく、一人当たりの年間消費量は22キロと東欧諸国で最も多い。
\しかし、社会主義ブロック崩壊後、ヨーグルトも変わった。大量生産が主流になり、還元乳やパーム油、ヤシ油などが添加されているだけでなく、「輸入乳酸菌」を使った製品さえある。消費量も体制転換後、ほぼ半分まで落ち込んだ。本来の「ブルガリア・ヨーグルト」は手に入りにくくなり、神話に近い存在となった。
\現地の日刊紙『Standart』は最近、「本物のヨーグルトを食べるには日本に行かなければならないのか?」と問いかける記事を載せた。実は、ブルガリア乳酸菌の最大の輸出先は日本なのだ。さらに、日本では混ざり物のない昔ながらのヨーグルトが生産されている、というのが当地では驚きをもって受け止められている。
\4,000万人の日本人に食されていることが刺激になったかどうかはともかく、政府はヨーグルトの本場の面目躍如に乗り出した。昨年7月に導入された品質基準では、ブルガリア原産の乳酸菌を使い、保存料なしで20日間以上の賞味期間を保証することが義務付けられている。
\しかし、半年を過ぎた今でも認定を受けたメーカーはわずか7社で、さらに実際に生産されているのはわずか2種類に過ぎない。また、元祖ヨーグルトは酸味が強く、昨今の味に慣れた消費者に広く受け入れられるかどうかはわからない。ただ、ここ数年、食品をめぐる事件が起きたことで伝統的な食事を見直す動きも出ており、「健康食品」としての需要は確保できそうだ。
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