ウクライナが来年から、過去最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所の見学ツアーを開始する。同国非常事態省が13日発表したところによると、「医学的に安全かつ事故の被害が理解できるルート」を策定中だ。ツアーがいつ始まるのかは明らかにされていない。
\12日にチェルノブイリを見学した国連開発計画(UNDP)のクラーク総裁は、悲劇を語るツアーが経済収入をもたらすほか、核技術の安全性を考える重要な教訓となるとして、ウクライナ政府の計画を支持している。
\融解した4号炉を中心とした半径48キロメートルは、放射能汚染が最も激しいと認定され、事故からほぼ四半世紀が経った現在も立ち入りが禁止されている。ただ、当時、立ち退きを余儀なくされた元住民らや政情不安を理由に他の地域から逃げてきた人が数百人ほど住んでおり、キエフにはツアーを提供する企業もいくつかあるようだ。これらの非合法ツアーについて、非常事態省は「安全の不安がある」として注意を呼びかけている。
\4号炉は「石棺」と呼ばれる鉄筋コンクリートの建造物で覆われている。だが、老朽化が激しく倒壊する危険があるほか、ひび割れから染み込んだ雨水による地下水の汚染も懸念される。新しいシェルターが完成するのは早くて2015年と言われる。
\当然、ツアーでは防護服着用などの措置が採られるのだろうが、こんな状態で「安全なルート」なんてあるのだろうか、という疑問が浮かぶ。チェルノブイリで拡散された放射性物質は、広島型原爆の300倍とも言われる。原爆投下直後の広島や長崎に行くような感じで、頼まれても行きたくないが、果たして、ツアーが成立するほど命知らずの物好きがいるのだろうか。
\ \■チェルノブイリ原発事故
\ \1986年4月26日未明、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉が、保守点検中に暴走し、炉心が融解、爆発した。爆発による火災で放射性物質が大量に拡散され、欧州だけでなく日本でも放射能が観測された。ソ連当局は当時、運転員の操作ミスが理由と発表したが、1991年の再調査で構造的欠陥があったことが公表された。
\強度の汚染地域から移住を強いられた人は13万5,000人、汚染地域全体の住民数は600万人に上る。被爆などによって事故直後に亡くなった人は31人。その後、子どもの甲状腺がんが多発するなど、放射線による健康被害の問題が続いている。
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