2013/4/24

コーヒーブレイク

くつろぎのカフェ~ロシア

この記事の要約

モスクワの目抜き通りに一風変わった喫茶店がある。プーシキン広場とクレムリンの間を走るトゥヴェルスカヤ通りの「カフェ・ツィフェルブラト」がそれだ。\ ここでは飲み物にお金は払わない。過ごした時間にお金がかかるのだ。代金は飲 […]

モスクワの目抜き通りに一風変わった喫茶店がある。プーシキン広場とクレムリンの間を走るトゥヴェルスカヤ通りの「カフェ・ツィフェルブラト」がそれだ。

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ここでは飲み物にお金は払わない。過ごした時間にお金がかかるのだ。代金は飲食代込みで1分ごとに2ルーブル、1時間いると120ルーブル(約374円)かかる。物価の高いモスクワではカプチーノ1杯より安い。コーヒー、お茶は多くの種類をそろえ、クッキー、果物もセルフサービスで食べ放題。飲食物の持ち込みも自由となっている。

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モスクワは広く、地下鉄でも道路でも急いでいる人ばかりだ。用事の合間に一息つくこともできない。また、高い家賃のため狭い住宅に大人数の家族が住むことも多く、友人などとゆっくり会って話すのも簡単ではない。

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そんな中でこのカフェは「くつろぎの場」を提供している。

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創設者のイワン・ミティンさん(28)は、ロシア人の心が「不安」でいっぱいになっている、と話す。不安の対象はスターリンから共産主義者へと変わり、今は国家の恣意に向けられている。それに加えて、やっと得たわずかな豊かささえも失われるのではという懸念が強い。「不安」があると、人間は自分に対しても他人に対しても冷酷になり、不振と孤独を生み出す。

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だからこそ、人々が互いに認め合い、自由に話し合えるような場がなければと、同じモスクワのポクロフカ通りにアパートの部屋を借りて始めたのが「ツィフェルブラト」だ。

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テーブルや椅子など最小限の家具を運び込み、本棚には作家や役者を目指したというミティンさんらしくトルストイ、ハインリヒ・ベル、エドガー・アラン・ポーなどの著作を並べた。最初は友人や近所の人を呼んだが、口コミで客がどんどん増えた。今ではサンクト・ペテルブルグやロストフなど他の都市やウクライナにも支店がある。

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利用するのは学生や新興中産層など若い人が中心だ。カフェに通う顔見知りや新参客と話したりゲームを楽しんだりする人が多いが、授業の合間に友達と勉強したり、絵画の個人授業をしたりする人もいる。

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ロンドンにも出店する計画があるというが、このコンセプトが他のコミュニティーにも受け入れられるだろうか。時間が答えを出してくれることだろう。

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