2012/5/30

コーヒーブレイク

歌謡祭と人権~アゼルバイジャン

この記事の要約

欧州26カ国が参加した今年の欧州歌謡祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」は、26日の開催を前に、主催国であるアゼルバイジャンの民主主義の遅れ、人権侵害といった問題が大きく取り上げられた。丸腰の人権擁護活動家を逮捕する […]

欧州26カ国が参加した今年の欧州歌謡祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」は、26日の開催を前に、主催国であるアゼルバイジャンの民主主義の遅れ、人権侵害といった問題が大きく取り上げられた。丸腰の人権擁護活動家を逮捕する当局の姿や、ユーロビジョン会場の建設・交通路整備で立ち退きを迫られる若い親子の様子などが報道され、権威主義で汚職のはびこるアゼルバイジャンというイメージが視聴者に示された。

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この風潮に異議を唱えているのが昨年末まで在アゼルバイジャン米国大使を務めたマシュー・ブライザ(Bryza)氏だ。同氏はブルームバーグ通信への寄稿で、同国における人権侵害が大きな問題であることを認めた上で、欧米諸国が注目しない側面を紹介した。

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同氏は、昨年のユーロビジョンでアゼルバイジャン代表が1位となり、今年の開催地がバクーに決まったことが、人権問題の進展に予期しないきっかけを与えたとみる。ユーロビジョンは1億2,500万人が視聴するといわれる大イベントで、アゼルバイジャンへの注目が高まるのが確実だったからだ。

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住宅の強制撤去など、政府が過ちを犯したのは確かだが、その一方で、政治犯として監禁されていたジャーナリストのファトゥライエフ(Fatullayev)氏、反政府活動家のサヴァラン(Savalan)氏を釈放したことは注目に値する。このような小さい動きでも意義を認めることが大切だ。さもなければ、欧米諸国は意図がはっきりしない批判屋とみられ、アゼルバイジャンの信頼を損なうことになる。

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欧米諸国のアゼルバイジャンに対するイメージは「汚職が横行し、非民主的で、真摯に受け止めるだけの価値がない」というものではないだろうか。アゼルバイジャンはしかし、人口600万人の小国ながら、イランとロシアの両国と国境を接する唯一の国で、ガス・石油の資源大国でもある。穏健的なシーア派が多数を占める世俗国家で、最近ではシナゴーグやローマ・カトリック教会堂の建設も認められた。宗教国家イランがアゼルバイジャンの政策が自国民に悪影響を与えるとして、アゼルバイジャンの安定を崩そうと試みるほど、「自由」な部分もあるということだ。

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また、アゼルバイジャンは石油資源の供給で欧米諸国との結びつきを強めている。慎重な財務・金融政策を実施し、ノルウェーをモデルにした投資基金(SWF)を確立した。

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社会に浸透する汚職にもかかわらず、貧困対策プログラムを成功させ、貧困率は2003年の49%から09年には9.1%(世銀調査では16%)まで低下した。

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アゼルバイジャンは欧米との提携を目指している。強力な友好関係を築き、友人としての立場で国内の改革を促していくのが我々の課題だ。

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■グランプリはスウェーデン

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26日のユーロビジョンでグランプリに輝いたのはスウェーデン代表ロレーンさん(28)の「ユーフォリア(Euphoria)」だ。ロレーンさんはモロッコ出身。激しいダンスを織り込んだステージで圧倒的な支持を受け、過去で2番目に高い得点で優勝した。

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もうひとつ、注目されたのがロシア代表のおばあちゃんコーラス「ブラノフスキ・バブーシュキ」の「パーティー・フォー・エブリバディ」だ。伝統的な農民の衣装をまとい、ディスコライトのなかで体を揺らして踊る姿はユーロビジョンとはミスマッチだったが、それが余計に受けたらしい。堂々の準優勝に輝いた。7人のメンバーのうち5人が70歳以上というおばあちゃんたち。賞金は「村の教会を建てる費用に寄付する」そうだ。

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