2010/9/29

ロシア

割安感強い石油株

この記事の要約

ロシアの株式市場は金融危機の打撃から力強い回復をみせているが、株価収益率(PER)は6.5倍と、新興国の株式市場の平均値である12倍を下回っており、依然として割安な水準にある。基幹産業である石油部門でも株価の戻りは遅く、 […]

ロシアの株式市場は金融危機の打撃から力強い回復をみせているが、株価収益率(PER)は6.5倍と、新興国の株式市場の平均値である12倍を下回っており、依然として割安な水準にある。基幹産業である石油部門でも株価の戻りは遅く、大手投資銀行ルネッサンスキャピタルによると、現在は適正株価の7割程度に止まっているという。

\

石油会社への投資が盛り上がらない背景には、石油産業の成長見通しが不透明なことがある。ロシアは世界最大の石油輸出国だが、既存油田の生産量が頭打ちになる一方で、新規油田の開発は進んでいない。石油会社には輸出関税や鉱物資源採掘税などが課税されており、高額の税負担が油田開発に向ける投資余力を削っているためだ。ただ、国営企業の場合は事情が異なり、例えば政府が75.2%を出資するロスネフチは、東シベリアで生産する原油については輸出関税を7月まで免除されていた。この免税措置は7月に撤廃されたものの、東シベリア産原油の輸出税には現在も優遇税率が適用されている。ロスネフチのライバルである民間最大手ルクオイルのアレクペロフ社長はあるインタビューで、「政府系石油会社と民間石油会社に差別待遇を行っている」と怒りをあらわにした。

\

国営石油会社は、税制面だけでなく油田開発権の獲得でも優遇されてきた。それだけに、先ごろ行われた未開発の油田としては国内最大級の北極圏のチトフ油田及びトレブス油田の開発権入札にロスネフチが参加を見送ったことは驚きを持って迎えられた。同入札にはルクオイル、TNK-BP、ガスプロムネフチ、バシュネフチ、スルグトネフチェガス、印ONGCが応札したが、業界関係者の間ではルクオイルが落札者となる可能性が高いとの見方が有力だ。

\

同社はここ数年間、新規油田の開発を行っておらず、成長の見通しが立たないことから株価は下落傾向にあった。加えて米コノコフィリップスがルクオイルの持ち株を売却したことも株価の下押し材料となった。一方で、コノコが資本を引き揚げることによって、ルクオイルのロシア企業としての性格が強化され、国内での資源開発に有利に働く可能性があると見方もある。また、政府がカスピ海での資源開発に税優遇措置を適用するとしていることも、同地で大きな権益を持つルクオイルにとって好材料とみられている。

\