日本最大手で世界3位のたばこメーカーである日本たばこ産業(JT)は9月28日、ロシアとその周辺国における販売が回復するとの見通しを示した。景気改善を受けて夏以降、販売量がわずかながら増加に転じているためだ。同社は日本での販売減を補うため、同地域での販売を強化する方針を示している。
\JTによると、同社がロシアや周辺諸国で販売する「Winston」や「LD」の販売数量は1-3月が前年同期比9.7%減(ロシア:10.1%減)、4-6月が7.3%減(同7.1%減)とマイナス成長が続いていた。しかし、夏以降の消費の持ち直しを反映し、7-8月(2ヶ月のデータ)は0.6%(同0.5%)の増加に転じた。ロシアの投資会社VTBキャピタルは、今年の同国経済成長率を4.3%(09年:マイナス7.9%)と予測しており、消費の回復でたばこの販売量も増加するとみこまれる。
\日本国内では、今月1日からのたばこ税増税で1箱当たりの小売価格が100~140円引き上げられ、販売増加は見込めない状態。たばこの価格がチョコレートやビールと同じくらい安価なロシアやウクライナで販売拡大を目指す方針だ。同社の海外販売量に占める独立国家共同体(CIS)と南東欧の比率は49%に上っている。
\ただ、禁煙の動きは同地域でも広がっており、将来的に需要が鈍化する恐れもある。世界保健機関(WHO)などが支援する世界最大のたばこ調査GATSが08~10年にウクライナの成人(15歳以上)8,000人以上を対象に実施した調査によると、同国の喫煙率は28.8%。そのうち約7割が禁煙希望者、4割が禁煙経験者だった。また、成人の約9割が喫煙や受動喫煙が健康に害を及ぼすことを知っている。職場の完全禁煙実施についても9割以上が支持すると答えている。
\なお、JTの2010年4-6月期利益は、前年同期比46.7%減の228億4,000万円に激減した。カナダ政府への過料支払いで132億6,300万円を特別損失として計上したことが響いた。通期の国内販売は、4年ぶりのたばこ増税により前期に比べ16%落ち込む見通しだ。
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