ハンガリー西部のアルミニウム精錬工場で廃液をためる貯水池の堤防が4日夜に決壊し周辺の村落に大量の赤色の有害汚泥が流出した事故で、11日までに汚泥に呑み込まれた自動車の乗員4人をはじめ8人が死亡、2人が行方不明となっている。重金属や強いアルカリ性の汚泥に触れてやけどをした人は150人にのぼっている。10日には環境政策を担当するZoltan Illes政務次官が、堤防に新たな亀裂が見つかったとし、再び決壊する可能性が高いと示唆した。被害が最も深刻なコロンタール村の住民800人が避難したほか、周辺の村落の6,000人にも避難勧告が出された。政府は月曜日の夜までに緊急防護壁を建設するため、突貫工事を続けている。
\現地のMTI通信や複数の欧州メディアのこれまでの情報をまとめると、今回の事故では約100万立方メートルの有害汚泥が流出した。工場の周囲40キロメートルの地域の植物、動物が死滅したうえ、被災地を流れるマーチャル川の魚がほぼ全滅するなど、同国史上最悪の化学事故となった。コロンタール村を視察したオルバン首相は、同村の一部について、半永久的に人の住めない土地になる可能性が高いとの見解を示した。
\7日にはアルカリ度の高い汚水がドナウ川にも到達した。ただ、環境保護の専門家はドナウ川への影響について、「ドナウ川が(被災地より下流にある)ブダペストに到達するまでに、アルカリ度は許容範囲内に薄まる」として、安全に大きな問題はないとしている。
\ハンガリー政府は、被災地に緊急処理部隊を派遣し、汚泥をポンプで吸い上げるなどの除去作業を進めている。欧州連合(EU)にも化学処理要員の派遣を緊急要請した。マーチャル川やドナウ川支流のジェール川、ドナウ川には汚水のアルカリ度を薄めるため、石膏などの中和剤を撒いている。汚泥の除去作業は数カ月、最悪の場合は1年かかる見通しという。
\政府は11日、事故の原因となったアルミ工場を再び政府の管理下に置くため、同工場を運営する国内有数の精錬会社、MALハンガリアン・アルミニウムを再国営化すると発表した。今週中に国営化のための法案を議会に提出する方針という。また、警察当局がMALの社長を逮捕したことも明らかにした。
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