ルーマニアのボック首相は3日、6閣僚の交代を発表した。この夏に実施された財政緊縮策の影響で国民支持率が急落していることを受けた措置。ただ、新大臣6人のうち4人はほぼ無名の政治家で、国民の批判をかわすためのポーズと見る向きもある。ボック首相は改造内閣を率いて国際通貨基金(IMF)との交渉に臨むこととなる。
\大臣が入れ替わるのは、緊縮財政に対する批判の矢面に立つ財務、経済、労働の各省および農業、運輸、通信の全6省だ。ボアジウ運輸大臣とタバラ農業大臣を除くと大臣歴のある者はなく、新内閣の政務能力に疑問の声もあがっている。
\ボック首相の政権基盤は大きく揺らいでいる。内閣不支持率は85%に上り、首相が率いる民主自由党(PDL)内でも、今回の内閣改造を支持する議員が3分の2にとどまるなど、批判が強まっている。首相が解任する大臣の数を予定の3人から6人に増やしたのも、党内から首相辞任を求める声が出たためといわれ、政権運営は困難になりそうだ。
\野党はこの秋、議会に内閣不信任決議案を提出する構えで、ING Bankのエコノミストは10~11月に危機が先鋭化する可能性を指摘する。支持率低下の理由である財政緊縮はIMFからの融資継続の必要条件となっている。ボック政権はこの夏、公務員など公共サービス従事者の給与25%カット、公的補助の縮小、付加価値税率5%引き上げを実行に移した。今後も、IMFの求めに応じて、年金改革を実施し、民間企業に対する政府債務を返済しなければならない状況にある。この点から見てもルーマニアの政情が不安定になる可能性は高そうだ。
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