ハンガリー政府は10月30日、公務員削減や国民年金強化策などを柱とする2011年度予算案を発表した。個人所得減税により景気を刺激するとともに、国民年金の底上げや特別税導入で財務の改善を図る。財政赤字を国内総生産(GDP)比2.94%に抑え、EUの財政規律を定めた安定成長協定で上限となっている同3%以下に引き下げる計画だ。しかし、国際通貨基金(IMF)や投資銀行などからは、その実現性を疑問視する声があがっている。
\マトルチ経済相によると、予算案はGDP成長率が3%、インフレ率が3.5%、基礎的財政収支(プライマリーバランス)が3億8,400万フォリントの黒字となることを前提に作成された。個人所得税率を一律16%に引き下げることで景気高揚を見込んでいる。
\歳出抑制に向けては、公的セクターにおける人件費支出で今年度水準を維持する。公務員69万人のうち2万5,000~3万人を削減することで、継続雇用される公務員の名目賃金は4~5%上昇するという。
\新財源としては、国民年金の強化を図る。25日に議会を通過した年金法により、民間積立型年金(強制個人年金)から国民年金への鞍(くら)替えが可能となり、民間年金加入者の90%が安全性の高い国民年金に再加入すると見込む。これにより国民年金基金の資産は2兆フォリント増加する。うち、5,400億フォリントを国民年金の赤字相殺に用い、残りで赤字削減を目的とする特別基金を設定する。また、民間年金基金に対する政府拠出金の払い込みを今月末から来年末までストップすることで、3,600億フォリントの歳出削減が可能と計算している。
\このほか、金融、エネルギー、電気通信、小売の各業界に対する3年間限定の特別税で歳入増を見込む。
\IMFは政府予算案について、ハンガリーの来年の経済成長率を2.5%と予測し、政府の観測が楽観的過ぎると指摘。国民年金をめぐる措置についても、90年代後半の年金改革で安定が得られた年金制度を危うくするものと批判している。ゴールドマンサックス銀行でも、特別税で財政均衡を図るという手法は短視眼的で、長い目で見れば経済成長に悪影響を与えかねないとコメントしている。(1HUF=0.41JPY)
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