北大西洋条約機構(NATO)とロシアのメドベージェフ大統領は20日、ポルトガルの首都リスボンで首脳会議を開き、NATOが進める欧州ミサイル防衛(MD)計画へロシアが参加する可能性を共同で検討していくことを決定した。来年6月のNATO・ロシア防衛相会談までに軍高官レベルで状況を検証し、協力の形を具体化する。
\NATOのラスムセン事務局長は、今回の首脳会談を、ロシアとの協力に向けた新しいスタートで、歴史的意義があると評価。メドベージェフ大統領も、ロシアとNATOが具体的で実りのあるパートナー関係を築くという重要な局面に入った、とコメントした。オバマ米国大統領も、NATOとロシアの関係改善に期待感を示している。
\しかし、安全保障とミサイル防衛分野における両者の協力がどのような形をとるのか、現時点では全く明らかになっていない。メドベージェフ大統領は全面的な対等参加を求めているが、米国が過去にロシアの影響を極力抑える方針をとってきた経緯があり、一致点を見つけるのは容易ではないだろう。これに加え、2008年にNATOとロシアの関係が悪化したきっかけとなったグルジア問題でも両者の認識のずれは埋まっていない。ロシア側は交渉からグルジア問題を排除したい意向だが、それにNATOが応じるかは不透明だ。
\ロシアのシンクタンクである戦略評価研究所のコノヴァロフ所長は、「米国が、近い将来にイランからの攻撃を受ける危険を現実のものとみなしているのに対し、ロシアは数年はその可能性はないとみるなど、両陣営の見方には差がある」と指摘。指揮系統にロシア将校を配置することは避けられないが、MDシステムによる迎撃を阻止する権利をロシアに与えるべきではないとの考えを示している。
\NATOはすでに19日の時点で新戦略概念を採択。欧州全域をカバーするミサイル防衛(MD)システムを共同で構築することで合意するとともに、かつての仮想敵国ロシアと安全保障分野での協力を進める方針を明らかにしていた。
\なお、ロシアはNATOのアフガニスタン駐屯についても協力強化の方針を表明した。具体的には、ロシアを通過する物資・人員輸送の拡大、アフガニスタン軍に対するロシア製ヘリコプターの供与拡大とパイロット養成の強化などを内容としている。
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