2010/12/1

CIS諸国

ウクライナの外国直接投資、他国に比べ低調

この記事の要約

ウクライナへの外国直接投資(FDI)の回復が、他の中東欧諸国に比べ遅れている。ヤヌコビッチ大統領は2月の就任時に「政治的安定と改革を進めFDIを促進する」と約束したが、実現する見通しはまだ立っていない。エコノミストは同大 […]

ウクライナへの外国直接投資(FDI)の回復が、他の中東欧諸国に比べ遅れている。ヤヌコビッチ大統領は2月の就任時に「政治的安定と改革を進めFDIを促進する」と約束したが、実現する見通しはまだ立っていない。エコノミストは同大統領の下で政治的安定が進んだことを評価する一方、権力集中で汚職が増加、行政、司法改革も遅れており、外国投資家がウクライナから距離を置く原因になっていると指摘する。11月に議会で承認された税制改正案についても、オープンな議論がなかったと批判的だ。

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ウクライナ国家統計委員会は先ごろ、今年1-9月期のFDI流入額が前年同期比14.3%減の26億ドルに縮小したと発表した。中銀は10月に同8%増の36億ドルと発表しており、数値が錯綜しているが、確かなことは他の東欧諸国に比べFDIの回復が遅いことだ。米投資会社BG Capitalのエコノミストは、人口がウクライナより1,200万人少ない隣国ポーランドの今年のFDI流入額が130億ドルに達する一方、クライナは54億ドルにとどまると予想。ウィーン経済研究所(WIIW)によると、ロシア・CISを含む中東欧地域の今年の予想FDI流入額900億ドルのうちウクライナが占める割合は1%以下になる見通しだ。

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また、FDIの内容にも問題がある。BG Capitalによると、09年と今年1-9月期のウクライナへのFDIの35~40%が、M&Aや欧州の大手銀行がウクライナ子会社を救うために行った「強制的」なFDIで、投資先国に新たな法人を設立し、雇用促進や技術開発に寄与するグリーンフィールド投資の割合は少ないという。

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ウクライナ経済界では政界と密接な関係を持つ新興財閥が鉄鋼やエネルギー、化学分野の一部の大手企業を牛耳っており、外国投資家が参入するのは難しい。ヤヌコビッチ大統領が何らかの投資インセンティブをとらない限り、隣国との差はますます開く恐れがある。

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