ウクライナのヤヌコビッチ大統領は11月30日、自営業者に対する課税強化を内容とする税制改革法案に対して拒否権を行使した。国民の抗議に屈して財政健全化に必要な施策を修正する形となり、ウクライナ政府の改革実行力に疑問が浮上している。
\税制改革法案は、国際通貨基金(IMF)が融資の条件とする財政赤字削減が目的。タクシー運転手や理容師といった自営業者の税務報告義務を強化し、脱税や社会保険料逃れを難しくする内容だ。18日に議会を通過して以来、全国的に抗議行動が広まった。ヤヌコビッチ大統領は抗議に対し、「痛みを伴うが、必要な措置」として、法案を支持する姿勢を示していた。
\シティバンクは、今回の拒否権発動について、国民からの支持を維持するために改革を犠牲にしたとコメント。来年に予定される女性の年金給付開始年齢引き上げや、一般ガス料金の値上げについても、実施の遅れや計画の行き詰まりが懸念されると指摘している。
\ウクライナはIMFから総額150億米ドルの融資を受ける条件として、2011年の財政赤字を国内総生産の3.5%に抑えなければならない。今年は5~5.5%となる見通しだ。
\ \■ウクライナ議会、修正法案を可決
\ \ウクライナ議会は2日、ヤヌコビッチ大統領の意見を取り入れた税制改革法修正案を可決した。当初の法案で予定していた自営業者の納税申告の厳密化を取りやめる内容で、全国的に広がっていた抗議行動の沈静化がねらい。ウクライナ政府は、今月20日までの来年度予算成立にめどが立ち、IMFからの融資を受ける前提条件を満たせる運びとなった。
\自営業者はウクライナ就労人口の19%を占める。当初の税制改革が高額所得者に有利で、自営業者は増税となると主張し、全国的な抗議行動を繰り広げていた。
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