バルカン諸国は金融危機の後遺症から脱却できておらず、低成長、高インフレ、高失業率に苦しめられている。今年も劇的な回復は見込めず、成長率が危機以前の水準に回復するのは12年以降になるとの見方が有力だ。
\ルーマニアや旧ユーゴスラビア諸国などでは財政再建に向けた厳しい引き締め策の結果、景気回復が遅れており、2010年の失業率はセルビアが20%、ボスニア・ヘルツェゴビナが27%、マケドニアが32%とそれぞれ過去最悪の水準となった。来年にも欧州連合(EU)に加盟する可能性があるクロアチアでも18%と高い。オーストリアの『ディー・プレッセ』紙によると、バルカン諸国の経済成長率が金融危機以前の4%台に復帰するのは12年以降になる見通しだ。唯一の例外はモンテネグロで、ロシアからの資本流入が加速していることなどから、今年は4.5%の成長が見込まれている。
\厳しい状況はEU加盟国でも同じだ。バルカン地域の成長をけん引してきたルーマニアも、今年は0.2~1.7%の低成長にとどまる見通し。金融危機の際に国際通貨基金(IMF)から緊急融資を受ける条件として、厳しい財政引き締め策の実施を求められており、エミール・ボック首相は先ごろ、現在約130万人いる公務員の数を今後数年で90万人にまで削減する方針を明らかにした。
\一方、ブルガリアは弱い内需と投資に悩まされているものの、輸出の力強い回復によりひと足早く成長軌道に戻っており、今年は2.5%、12年には6%の成長もあり得るとの強気の見通しが出ている。ブルガリアの公的債務残高は国内総生産の16%と欧州で最低の水準にあり、財政赤字比率も4.8%とEUの財政規律が定める基準を上回ってはいるものの、近隣諸国と比べれば低い水準で、こうした良好な財政状態が経済にもプラスの影響を与えているとみられている。
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