世界の主要新興国は金融危機以前の力強い成長を回復しつつあるが、ロシアは例外だ。2009年に7.9%のマイナス成長に見舞われた同国は、10年に景気後退から脱却はしたものの、成長率は3.8%(暫定値)と、中国やブラジル、インドなど他の主要新興国に比べ大きく見劣りしている。
\経済発展省のアンドレイ・クレパッチ次官は、成長を後押ししてきた石油・ガスなどの資源価格が危機前の水準を依然として下回っていることが成長を抑制している最大の要因だと指摘する。一方、有力エコノミストのマキシム・ブラント氏は、ロシアでは汚職がまん延していることに加え、政府が輸出収入の減少を補うため増税に踏み切ったことにより、投資環境の悪化に拍車がかかっていることが成長の重しとなっていると分析している。ブラジルやインドが資本の大量流入に直面しているのとは対照的に、昨年のロシアからの資本流出額は220億米ドルに達した。こうした現状を受け、プーチン首相は昨年末、外国からの投資に対する規制を緩和する方針を表明。メドベージェフ大統領も、投資環境を改善に努める決意を明らかにした。
\ロシアが投資を呼び込み持続的な成長を達成するためには、天然資源に依存する経済体制から脱却し、より革新的で技術依存型の産業を育てる必要がある。その起爆剤として期待を集めているのが、ロシア版シリコンバレー「スコルコボ技術革新センター」の建設プロジェクトだ。メドベージェフ大統領は昨年3月、モスクワ近郊スコルコボに先端産業を集めたセンターを建設すると表明。米シスコシステムズやマイクロソフト、独シーメンスなどが参加に名乗りを挙げている。
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