米フォードは18日、ロシア自動車2位のソレルスと業務提携で覚書を交わしたと発表した。同じくソレルスとの提携を狙っていたイタリア競合のフィアットを打ち負かし、成長著しいロシアの自動車市場における地位強化を狙う。フィアットはソレルスとの乗用車生産提携解消を受けて、現地生産事業を独自に立ち上げる計画を明らかにした。
\両社は折半出資の合弁会社フォード・ソレルスを設立する。フォードが生産ノウハウとディーラー網、最新モデルを、ソレルスがロシア市場のノウハウと生産設備を提供する。合弁会社はサンクトペテルブルグ郊外のフォード・フセヴォロジスク工場と、タタルスタン共和国にあるソレルスの2工場を統括し、年末にもフォードブランド車の輸入・生産・販売を開始する。生産台数は2015年までに30万台以上に達する見通し。また、◇エンジン、プレス部品など自動車部品の生産◇研究開発事業の立ち上げ◇フォード部品の輸入販売――も計画している。
\両社は政府に対し、部品輸入関税の減額を申請する方針だ。同措置の適用を受けるには今後4年で現地生産台数を30万台以上に引き上げなければならない。また、許可手続きの期限は今月末に迫っている。
\今回の提携はロシア政府の推進する国内自動車産業の振興政策に沿うものだ。政府は外国有力メーカーとの提携を柱として、2020年をめどに自動車産業の近代化を図る方針を掲げている。
\フォードは2002年からロシアで生産を開始。昨年はフセヴォロジスク工場から乗用車「モンデオ」と「フォーカス」を計8万台出荷した。同工場は12万5,000台まで増産が可能だ。
\一方、ソレルスの年産能力は19万5,000台。自社ブランドの乗用車と小型商用車を生産するほか、フィアットの小型乗用車と小型商用車、韓国・双竜自動車のオフロード車、いすゞのトラックを受託生産している。フォードとの提携でフィアットの乗用車生産を中止するが、小型商用車では協力関係を継続する。
\ \■フィアットとの合弁破棄、原因は資金難?
\ \フィアットは2010年2月にソレルスと合弁生産で覚書を取り交わし、2016年までに現地生産台数を年50万台に引き上げる予定だった。ソレルスは計画破棄の理由を明らかにしていないが、資金繰りが障害となったとみられている。同社とフィアットはロシア国営の対外経済銀行(VEB)に対し、合弁会社の少数株式と引き換えに、期間15年、総額21億ユーロの貸し付けを申し込んでいた。しかしVEBは昨年12月に融資を拒否していた。(東欧経済ニュース2010年2月17日号「フィアットが露ソレルスと合弁、年50万台生産へ」を参照)
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