2011/2/23

ロシア

英アストラゼネカ、カルーガ州の工場建設に1.5億ドル投資

この記事の要約

英国の製薬大手アストラゼネカが、モスクワ南西部に位置するカルーガ州ヴォルシノ工業団地で、ロシア初の自社工場を建設する。医薬品の国産化比率を引き上げる政府の方針に沿ったもので、投資規模は1億5,000万米ドル。4月に着工し […]

英国の製薬大手アストラゼネカが、モスクワ南西部に位置するカルーガ州ヴォルシノ工業団地で、ロシア初の自社工場を建設する。医薬品の国産化比率を引き上げる政府の方針に沿ったもので、投資規模は1億5,000万米ドル。4月に着工し、2013年の操業開始、2017年の黒字転換を目指す。雇用規模は145人。投資に対し、州政府から優遇措置の適用を受ける。

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プレス発表によると、新工場では薬剤の調整から生産、包装までを一貫して手掛ける。がん、消化器・循環器・呼吸器系疾患、精神病、院内感染症など重要疾患の治療薬に重点を置く。年産能力は1,600万パック。また、研究開発も視野に入れる。

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ロシア子会社のパヴレティッチ社長は工場建設を決めた理由として、「医薬品の製造・品質管理基準であるGMPをクリアするには、新たに建設するほうが既存工場の買収・近代化よりも安いと判断した」と説明した。投資の動機としては、ロシアが重要市場であるとの認識とともに、同国製薬業界の将来性を指摘した。

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ロシア政府は2009年、国内製薬産業を強化する国家戦略を採択。2020年までに医薬品の国産比率を現在の23%から50%まで引き上げる目標だ。

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これを受けて多くの製薬メーカーが現地工場の整備に動いている。スイスのニコメッドは7,500万ユーロを投じてヤロスラヴリ州に工場を建設中だ。フランスのサノフィ・アベンティスはオリョール州のインスリン工場を買収した。また、ドイツのヤンセン・シラグは抗がん剤生産技術の移管に向けてロシア企業と交渉している事実を明らかにしている。

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このほか、ノバルティス(スイス)、イプセン(フランス)、テバ(イスラエル)、ノボ・ノルディスク(デンマーク)、ベルリン・ケミ(ドイツ)などが現地生産化を計画する。

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ロシアでは適切な治療が受けられない患者が多く、国民の平均寿命は60歳に満たない。政府は2020年までにこれを75歳まで延ばすことを目標に掲げている。

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■大型投資を呼び込むカルーガ州

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カルーガ州は、モスクワに近い地の利と免税などの投資優遇制度を武器に数多くの大型投資を呼び込んでいる。フォルクスワーゲン(VW)、PSAプジョー・シトロエン、三菱自動車といった自動車メーカーのほか、サムスン電子(韓国)、化粧品のロレアル(フランス)などが進出済みだ。

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アルタモーノフ州知事が現地英字紙『モスクワ・タイムズ』に明らかにしたところによると、同州の国外直接投資(FDI)は昨年12億ドルに達し、ロシア全体の10%を占めた。工業生産高(数量ベース)は前年比で45%拡大。今年も30%の伸びが見込まれる。

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同州では長期的視野に立った増収政策をとっており、企業に対して一定期間、免税を実施することで投資を誘致している。その努力はすでに実を結び始め、昨年の税収額は前年実績を43.1%上回った。VWとサムスン電子だけで納税額は30億ルーブル(1億ドル)に上った。

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