2011/3/16

ロシア

ロシア政府、大型投資ファンドの設定を検討

この記事の要約

ロシア政府が100億米ドル規模の投資ファンド設定を検討している。国際的な投資会社と共同で国内企業・プロジェクトに投資する目的。これにより国外投資会社の対ロシア投資リスクを軽減し、投資を促進する狙いだ。英『フィナンシャル・ […]

ロシア政府が100億米ドル規模の投資ファンド設定を検討している。国際的な投資会社と共同で国内企業・プロジェクトに投資する目的。これにより国外投資会社の対ロシア投資リスクを軽減し、投資を促進する狙いだ。英『フィナンシャル・タイムズ(FT)』紙が消息筋の情報として6日付で報じた。政府はこれに加え、モスクワを国際金融センターに育てるため、大統領諮問委員会を設置する。

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メディア報道によると、新ファンド設定に向けて、対外経済銀行(VEB)が米ゴールドマン・サックス証券と準備を進めている。実行に移すかどうかは、今月末までにプーチン首相が決定するという。

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ロシアに対する大手投資会社による投資額は今年に入ってから15億ドルと、中国の29億ドルの約半分にとどまっている(ブルームバーグ通信調べ)。国際的な投資ファンドのうちロシアに事務所を構えているのは米国のTPGキャピタルだけで、同じく米国の投資ファンド大手、カーライルは2004年に進出したものの翌05年に撤退した。カーライルの共同設立者であるルーベンスタイン氏は今月初めにも、「ロシアはリスクのわりに利益が小さい」とその問題点を指摘している。

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ドイツの投資会社であるヴェルムート・アセットマネジメントは、ロシアでは投資対象となりうる規模を持つ企業が少なく、民間投資会社にとって市場が小さいと分析する。さらに、ロシア財閥がすでに投資活動を行っており、国外企業にとっては投資条件が良好とはいえないようだ。地元のアルファ・キャピタル・パートナーズでも、「資金だけをつぎ込んでも投資は拡大しない。投資環境の整備に向けた政府の努力が必要」とみる。

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■諮問委員会、3分の2が外国人

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一方、諮問委員会については11日までに外国人19名を含む27名で構成されることが明らかになった。ブルームバーグ通信によると、JPモルガン・チェースのディモン社長、シティグループのパンディット社長、ゴールドマン・サックスのブランクファイン社長、バンクオブアメリカのモイニハン社長、モルガン・スタンレーのマック社長、ブラックストーンのシュワルツマン社長、ドイツ銀行のアッカーマン頭取など国際金融界の大物が委員リストに名を連ねる。また、3大会計事務所からは、プライスウォーターハウスクーパースのナリー会長、KPMGのフリン社長、アーンストヤングのターリー社長が選ばれた。アジアからは唯一、野村ホールディングスの渡辺賢一社長が起用された。

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国内からはヴォロシン元大統領長官のほか、ズベルバンクのグレフ頭取、対外貿易銀行(VTB)のコスチン頭取、実業家のケリモフ氏、投資銀行トロイカ・ディアローグのヴァルダニアン社長などが委員に選ばれた。

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モスクワのシャロノフ副市長は、同市が金融センターとして機能するためにクリアするべき3つの課題として、◇証券保管振替機関など必要な機関を創設し、効率的で適切な金融システムを構築する◇公平な法体系を整備して起業を促進し、優良企業を排出する地盤をつくる◇交通機関の整備、保健・教育サービスの改善、文化面での取り組み強化、外国人のアクセシビリティ向上などを実施し、ハード・ソフト両面でインフラを整える――を挙げている。

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モスクワの金融センター化に向けてはすでに、大統領直轄の金融市場開発委員会や、ヴォロシン元大統領府長官が統括する数多くの作業班が設置されている。さらに、法律や行政手続、徴税、社会基盤といった個別のテーマについても作業グループが存在し、これらの組織がどう連携していくのかがプロジェクトの行方を左右しそうだ。

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