中東欧事業に強いオーストリア大手銀行のエルステが29日発表した統計によると、中東欧諸国における昨年の外国直接投資(FDI)は前年比で9%増加し、45%の激減を示した09年からプラスに転じた。チェコ、ポーランドなどが自力で危機を乗り切ったほか、支援を必要としたハンガリーやルーマニアなどでも財政健全化が進展しており、政府の資金調達コストは一部のユーロ採用国を下回っている。
\国内総生産(GDP)に対するFDIの比率が最も大きかったのはチェコで約4%に上った。ハンガリーは2%となり、低落傾向にストップがかかった。スロバキアは外資系企業の利益再投資が増加したことや、親会社からの融資などがけん引して1%を確保した。ウクライナは引き続き4%弱と高水準で、経常赤字とほぼ同じ規模となっている。
\金融投資も2009年第4四半期以降、チェコとポーランドを中心に再び増加している。投資対象の大部分が国債で、チェコ政府は昨年50億ユーロ、ポーランド政府は250億ユーロをそれぞれ調達した。
\一方、格付け会社による評価と、国債利回りのずれも表面化している。例えば、スロバキア国債の利回りは、格付けが同国より高いスペインやイタリアを下回っている。投資適格の最低等級に位置するクロアチアとハンガリー、投資不適格(投機的要素を含む)のルーマニアの国債でも、財政危機に陥ったポルトガルより利回りが小さい。エルステの中東欧担当アナリストであるコチアン氏は、「格付けには状況の変化にすばやく反応する柔軟性が欠けており、投資家は格付け以外の要素も考慮するようになっている」と話す。中東欧諸国の格上げは確実だが、実行されるのは来年以降と予測している。
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