2011/4/13

総合・マクロ

中東欧、温暖化ガス排出削減が急務

この記事の要約

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けて、中東欧諸国の取り組み強化が求められている。欧州復興開発銀行(EBRD)と英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の気候変動環境研究所は、中東欧およ […]

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けて、中東欧諸国の取り組み強化が求められている。欧州復興開発銀行(EBRD)と英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の気候変動環境研究所は、中東欧および中央アジアを対象にまとめた共同リポート「The Low-Carbon Transition」で、経済競争力を維持するには低炭素社会を見据えた施策を早期に実施する必要があると指摘。エネルギー集約型産業からの抵抗が大きい事実を認めながらも、啓蒙活動で国民の広い合意を得ることで実現できるとみている。

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リポートはまず、世界の平均気温の上昇を2度以下に抑えるため、省エネ・低炭素技術の開発などに多額の民間投資が必要である点を確認。その上で、中東欧・中央アジア諸国は2008年のCO2排出量を1990年比で28%減らしたものの、経済の重点が資源産業や製造業などのエネルギー集約産業にあり、依然として排出量が多いと指摘する。このため、各国政府は(1)経済改革(2)排出権取引制度の導入(3)省エネルギー基準・規制の導入――を迅速に進めるべきと提言している。

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(2)については、再生可能エネルギー技術を支援する効果を見込む。また、排出の多い産業ほど削減努力を迫られ、結果として排出量が減るとみる。同時に、民間投資を奨励する環境を作り出すため、(1)の経済改革も忘れてはならない。経済全体を対象とした改革の枠内でエネルギー価格のゆがみを正し、ビジネス環境を改善していけば、排出量削減の動きを間接的に支援することになる。

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これらの措置は早期の実施が望まれる。時期が遅れればそれだけ費用負担が膨らむからだ。長期的視野に立てば、迅速さが投資規模を抑えることにつながるとしている。特に、燃料輸出国では経済競争力を維持するため、将来的に世界の化石燃料需要が低下することを見越した施策が望まれる。

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エネルギー企業や素材産業などエネルギー集約型産業は、中東欧・中央アジアにおける主要な税収源となるなど、その重要性が高い。このため、これらの産業の反発を押し切って施策を実施するのが困難なのは確かだ。

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リポートはこの点に関してロシアを例に挙げる。同国は2030年までに、国内総生産(GDP)に対するエネルギー消費を毎年1%削減するとの目標を掲げているが、実現に向けた取り組みは政争の犠牲となり、ほとんど進んでいない。ガスプロムに対して採掘時の遊離ガス焼却を抑制するよう政治的な圧力がかけられたことや、2009年に14年からの白熱灯禁止が定められたことが挙げられるだけだ。

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抵抗を乗り越えてCO2削減を推進するには、地球温暖化が経済や環境にもたらす影響を国民に広く周知する努力が必要になる。これにより、施策の認容度が高まると考えられるからだ。

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