福島原発の事故を重く見たオーストリア政府は3月21日、隣国のスロバキアとチェコが計画する原子炉増設に反対し、欧州司法裁判所(ECJ)に提訴することを閣議決定した。スロバキアの日刊紙『Sme』が報じた。
\スロバキアはモホフチェ原発(ウィーンから170キロメートル)、チェコはテメリン原発(リンツから95キロメートル)でそれぞれ2基の原子炉を建設する計画。原発を持たない反原発のオーストリアでは隣国の計画に対する懸念が高まっている。オーストリアは過去にも、スロバキアの欧州連合(EU)加盟の条件として、安全面の懸念があったボフニチェ原発の第1、2号機(ロシア型加圧水型原子炉の第1世代)の閉鎖を強く要求した経緯がある。1号機は2006年末に、2号機も08年に運転を停止した。
\ただ、ECJは2009年、「EU加盟国は必要な許可を取得した他の加盟国の原発計画に関して、原子力利用を禁止することはできない」との判決を下した。スロバキア政府の報道官も今回のオーストリア政府の動きに対し、同判決に言及しながら反発している。オーストリア政府からは提訴に関する正式な報告は受けていないという。
\一方、オーストリアの反核運動家Radko Pavlovec氏は、スロバキアとチェコが計画している原子炉には放射能漏れを防止する遮蔽壁がないため、ECJでの裁判で安全性が争点となった場合、原告勝訴の可能性もあると主張している。
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