2011/6/15

ロシア

石油・ガスロビーが再可エネ拡大計画を妨害、目標達成困難に

この記事の要約

ロシアにおける再生可能エネルギーの将来は明るいものとはならなそうだ。政府は2020年までに国内需要の4.5%を再可エネでまかなう目標を掲げているが、石油・ガス産業ロビーが妨害活動を展開しているほか、国民の環境意識が弱く、 […]

ロシアにおける再生可能エネルギーの将来は明るいものとはならなそうだ。政府は2020年までに国内需要の4.5%を再可エネでまかなう目標を掲げているが、石油・ガス産業ロビーが妨害活動を展開しているほか、国民の環境意識が弱く、再可エネを推進する動機が小さいためだ。ただ、化石燃料の発電コストが高い遠隔地では環境エネルギーへの関心も高く、地方自治体の主導で導入を進めるところもある。

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ロシアのエネルギー需要に占める再可エネの比率(水力発電を除く)は1%未満で、米国の4.5%や欧州連合(EU)の7%に比べてずっと小さい。また、2020年の目標値も4.5%と、EUの20%の4分の1以下だ。それにも関わらず、石油・ガス産業は「パイの小さな一切れも渡すまい」とロビー活動を展開。ただでさえ「再可エネは非効率的」との見方が一般的で、新技術に対する懐疑心が強いロシアでは、「欧米諸国がロシアの石油・ガス産業を危機に陥れようとして、再可エネ・プロジェクトを支援している」という陰謀説がまかり通っているという。

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ロシアでは歳入の40%以上が石油・ガス産業由来で、政界との結びつきも強い。シマトコ・エネルギー相は再可エネを「有望な技術」としながらも、「我が国にとっては重要性が低く、大規模な利用は考えていない」と話している。一方、再可エネ陣営は政治の中枢に近いロビー活動家が存在しない。

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世界自然保護基金(WWF)ロシア支部によると、同国は海岸線が長く、森林が豊富で地形にも恵まれており、再可エネが利用しやすい。ソーラーと風力は限定的だが、林業で廃棄されるパルプや木くずの量は膨大で、バイオマスで世界一の座につくのも難しくない。潮の満ち干を利用した潮せき発電も北部沿岸地方では有望だ。しかし、再可エネの推進に必要な、政府のイニシアチブが欠けている。関連官公庁も、石油・ガスの輸出大国であるロシアで再可エネを推進して雇用を創出する必要はないとの立場で、上からの命令だから仕事をしているという状態だ。

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■遠隔地の電力供給で自治体が利用

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一方で、遠隔地住民への電力供給補助金が財政を圧迫する自治体は、再可エネの導入に積極的だ。例えば、カスピ海に面する南部連邦管区カルムイク共和国では風力発電が消費電力の60%を占め、今後も大幅拡大が予定されている。

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ロシアの風力発電プロジェクト企画会社Aktivitiは、極東連邦管区カムチャツカ地方で複数の風力発電パーク建設を手がけた。また、北部の自治体ではプロジェクトの第1段階である風力計測が始まりつつあるという。現在、イルクーツク州、サハリン州、ヤマロ・ネネツ自治管区、サハ共和国、アルハンゲリスク州などにアドバイスを行っている。これらの自治体は、発電燃料となるディーゼル油をヘリコプターで運ばなければならない遠隔地を抱える。遠隔地におけるキロワット時あたりの発電コストは100ルーブル(3.5米ドル)と国内平均の10倍に上り、費用削減に向けて再可エネへの関心が高い。

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