2011/8/10

総合・マクロ

ウクライナ前首相逮捕にロシアも批判を表明

この記事の要約

ウクライナのティモシェンコ前首相が5日、職権乱用罪に問われた裁判で審理を妨害したとして逮捕されたことに対し、米国や欧州連合(EU)だけでなく、ロシアも批判的な姿勢を明らかにした。ロシア外務省は、問題となっている2009年 […]

ウクライナのティモシェンコ前首相が5日、職権乱用罪に問われた裁判で審理を妨害したとして逮捕されたことに対し、米国や欧州連合(EU)だけでなく、ロシアも批判的な姿勢を明らかにした。ロシア外務省は、問題となっている2009年のガス供給契約が「両国の法律を厳守し、両国大統領の指示に基づいて結ばれた」との声明を出し、ティモシェンコ前首相にかけられている嫌疑を否定した。逮捕によって裁判が改めて国際的な注目を浴びる形となり、ウクライナ政府への圧力が高まっている。

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検察庁は、ティモシェンコ氏が首相在任中、職権を超えた形でロシアと天然ガス取引を行い、ウクライナに15億フリブナ(約1億3,200万ユーロ)の損害を与えたとして職権乱用罪の適用を求めている。有罪の場合、最長10年の懲役刑が科せられる。しかし、ティモシェンコ氏がヤヌコビッチ大統領の政敵であることから、この裁判の裏には政治的意図があるとする見方が主流だ。

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ティモシェンコ氏は5日の審理中、「政治裁判を行っている」と裁判官を批判したほか、証人として出席したアザロフ首相の証言中に繰り返し発言し、「汚職政治家」ととがめた。検察庁は「真実の究明を妨害し、審理規則を尊重しない」態度を問題として逮捕を請求、裁判所が許可した。

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ウクライナの政治専門家は、国内の抗議行動の大きさと政府に対する国際的な圧力が判決内容を左右するとみる。いずれにしても、逮捕が国際メディアの注目を集めたことは確かだ。ロシア日刊紙のイズベスチヤは「前首相は刑事裁判を政治裁判にすることに成功した」とコメントしており、ティモシェンコ氏が審理で騒ぎを起こしたのも結果を計算してのことだったのかもしれない。

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首都キエフではすでに8日、数千人規模の抗議行動が行われた。ウクライナ正教のフィラレート総主教も釈放を求めるなど、裁判は社会に波紋を広げている。政府が有罪にこだわるのか、外交関係に配慮してゆずるのか、裁判の成り行きに注目が集まる。

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