2012/1/25

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

ルーマニアで大規模な反大統領デモ、医療制度改革案を機に

この記事の要約

ルーマニアで財政緊縮政策と同政策を進める大統領に対する国民の不満が高まっている。政府の医療制度改革案に反対してアラファト保健相事務次官が10日辞任したことを機に、同次官の支持者が抗議行動を展開。これが全国に広がり、バセス […]

ルーマニアで財政緊縮政策と同政策を進める大統領に対する国民の不満が高まっている。政府の医療制度改革案に反対してアラファト保健相事務次官が10日辞任したことを機に、同次官の支持者が抗議行動を展開。これが全国に広がり、バセスク大統領と緊縮政策に対する国民の大規模抗議に発展した。政府はこの状況を受けて16日、従来の医療制度改革案を白紙に戻し、新たに検討することを約束。アラファト氏も次官再任の求めに応じた。ただ、デモの継続が予定されるなど事態が収拾する様子はなく、今後の動きが注目される。

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政府の医療改革法案は、(1)公立病院の完全民営化(2)病院ネットワークの再編(3)民間救急サービスの導入――などを骨子としていた。アラファト次官は(3)の施策により、自らが中心となって構築した公的救急システムSMURDの存続が危うくなるとみて公に法案を批判した。これを受けてバセスク大統領が事実上、次官を辞任に追い込んだ。

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SMURDは汚職がはびこるルーマニアの医療部門で正常に機能している数少ないサービスの一つ。国民も高く評価し、アラファト次官の人気の源泉となっていた。同次官の処遇はバセスク大統領の強権的な政治手法を象徴するもので、これが反大統領運動の発火点となった形だ。

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大統領を超党派的存在として規定する憲法に反し、バセスク大統領は7年前の就任後、すべての政策を牛耳る権力基盤を築くことに成功した。野党は抗議運動を勢力拡大につなげたいところだが、国民の不信は政治全般に及んでおり、野党側も自身に火の手が及ぶのを恐れて運動のイニシアチブをとれないのが現状だ。

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バセスク大統領の対抗馬となるような政治家が存在しないこと、また、欧州連合(EU)など国外からの支援も望めないことから、今回の抗議活動がルーマニア政治を変える可能性は小さい。

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ルーマニアは2009年に国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)から200億ユーロの緊急支援を受けた。融資条件である財政均衡に向けた施策を実行に移している。これまでに◇公務員の賃金25%カット◇公共部門の人員削減◇付加価値税率を19%から24%に引き上げ――などの措置をとった。

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ハンガリーと異なり緊縮財政を推進するルーマニア政府にEUは好意的で、国内情勢に介入することはないとみられている。

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