ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが欧州への供給量を縮小した。寒波到来で国内需要が拡大していることが理由だ。欧州には十分な備蓄があり、これまでのところ実害は出ていない。ただ、供給会社によっては調達量が30%減ったところもあるという。
\ガスプロム側は、数日にわたって送ガス量を10%減らしたことを認めたが、5日の時点ですでに通常の水準に戻したとコメント。輸送経由国であるウクライナが契約よりも多くガスを抜き取っていると批判している。
\中東欧では、ロシアとウクライナのガス紛争が原因で2009年にロシア産ガスの供給が数週間にわたってストップするという事態が生じた。これを機に、多くの国で貯蔵能力が強化されたほか、非常時に西欧から中東欧にガスが供給できるよう、パイプラインが新設された。
\シベリア高気圧による寒波で、ロシアにおけるガス需要は1日当たり20億立方メートルに上っている。これはブルガリアの年間消費量に匹敵するという。
\ \■ガスプロム、昨年の西欧向けガス供給量が増加
\ガスプロムの西欧向けガス供給量は昨年、13.5%増の1,120億3,000万立方メートルに拡大した。最も多かったのはドイツとトルコで、それぞれ340億2,000万立方メートル(前年比0.1%増)、259億9,000万立方メートル(前年比44.3%増)となった。イタリア向けも、前年比30.9%増の170億8,000万立方メートルと大きく伸びた。
\西欧とは対照的に中・東欧諸国向けの供給量は減少する傾向にある。中・東欧向けの供給量は前年比4.8%減の379億5,000万立方メートルに後退した。これまで順調に伸びていたポーランドは3.2%増の102億2,000万立方メートルにとどまった。チェコ向けは75億9,000万立方メートルとなり、前年から11.4%も減少した。
\ガスプロムは昨年、前年比0.9%増の5,130億立方メートルを生産した。2010年は前年比10%増の5,086億立方メートルのガスを生産したが、2008年の経済危機(リーマンショック)前から比べると410億立方メートル少ないという。
\ \■2011年Q3利益4.4%減
\ガスプロムの2011年7-9月期利益は前年同期比4.4%減の1,520億ルーブル(52億米ドル)に縮小した。通貨ルーブルの下落で米ドル建て債務の返済が膨らんだことが主因だ。販売量は3%減の842億立方メートルに減ったが、価格上昇で売上高は26%増の326億ドルに拡大した。他社からのガス調達が減少したことでコストも減り、利払い・税・償却前利益(EBITDA)は65%増の128億ドルに急増した。
\通期では、売上高で前期比27%増の1,500億ドル、EBITDAで33%増の600億ドル、利益で25%増の400億ドルを計上する見通しだ。
\1-9月期の投資高は384億ドルにも上った。パイプライン・プロジェクトやヤマル半島のボバネンコボ・ガス田の開発が主な投資先だ。
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