ハンガリー国営航空会社のマレーブ・ハンガリー航空は3日、全便の運航を停止すると発表した。政府による支援が欧州連合(EU)に禁じられ、資金繰りが悪化したためで、同国を代表するフラッグ・キャリアが存亡の危機を迎えている。
\赤字経営が続くマレーブは、政府の補助金でかろうじて支えられてきた。ところが、EUの欧州委員会が1月9日、補助金支給がEU競争法に反する不当な支援に当たるとして、同社が2007年から2010年にかけて受け取った総額380 億フォリント(約130億円)に上る補助金の返納を命令。これを受けて経営不安が一気に広がり、提携する広告会社や乗り入れている空港から代金の前払いを求められたが、運転資金が底をついて応じることができず、運行停止に追い込まれた。
\マレーブに95%を出資するハンガリー政府は、60億フォリントの債務を抱える同社の倒産を回避するため、会社更生手続き適用によって資産を保全しながら経営再建の道を探る方針で、2日に管財人が任命された。オルバン首相は3日に国営ラジオで、新たな出資者を募って新会社を設立し、マレーブの業務を引き継がせることも視野に入れていることを明らかにした。
\一方、マレーブと提携している日本航空は3日、今回の事態を受けて、ブダペスト―フランクフルト路線の共同運航便(JL7850/MA522、JL 7851/MA523)の運行を停止すると発表した。(1HUF=0.35JPY)
\ \■競合企業が商機狙う
\マレーブの運行停止で格安航空会社を中心に競合企業が事業拡大を狙っている。
\アイルランドのライアンエアーは3日、ブダペスト空港にボーイング737-800型機4機を配備し、17日から運行を開始する計画を明らかにした。ブダペスト発着の新路線は先月発表の5路線から31路線に拡大する。大量解雇が予定されるマレーブ航空の従業員を積極的に雇用する方針で、当初250人を採用する。
\ハンガリーのウィズエアはブダペスト空港における保有機数を現行の3機から3月末までに5機に増やし、ハンガリーにおける輸送能力を66%引き上げる方向だ。ブダペスト―ブカレスト路線の就航が決まっているほか、モスクワやイスタンブール、キエフ、テル・アビブにも路線を拡大したい意向。
\ドイツのルフトハンザ航空は、ベルリン―ブダペスト、ハンブルク―ブダペスト路線の運行を1日1便ずつ増やすと発表。同国2位のエア・ベルリンもベルリン―ブダペスト路線で便数を増やす。
\チェコのスマート・ウィングスは今月、ブダペスト―テル・アビブ路線を就航する。4月と5月にもブダペスト空港からの目的地を増やす予定だ。
\ブダペスト空港運営会社は売上の減少を食い止めるためにも競合航空会社の乗り入れ増加を図る必要がある。マレーブ航空はブダペスト空港の収入の40%を占めていた。(東欧経済ニュース2月1日号「ハンガリー・マレーブ航空、運転資金が枯渇」、1月11日号「欧州委、ハンガリー国営航空に公的支援の返済を求める」を参照)
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