ハンガリー東部のケチュケメートで独メルセデス・ベンツの新工場が29日操業を開始した。生産コストを抑え、価格に敏感なコンパクトカー・小型車部門における競争力を強化するのが狙い。当初は「Aクラス」と「Bクラス」を年10万台生産し、競合するBMWの「1シリーズ」、「X1」に対抗する。
\メルセデス・ベンツの組立拠点の開設は、1997年の米アラバマ工場以来、15年ぶり。中東欧では初めてで、ドイツ南西部のラシュタット工場と合わせて「Aクラス」と「Bクラス」の生産能力は45万台に拡大する。これはメルセデスが今年予定する販売台数の35%に当たる。また、ケチュケメート工場の生産能力は20万台まで「容易に」引き上げることができるという(同社)。
\ハンガリー生産はグループで進めるコスト削減計画の一環だ。熟練労働者を安く雇用することが可能で、独デュースブルク大学自動車リサーチセンターのドゥーデンヘッファー所長は、1台あたりの人件費が1,480ユーロ節約できる計算になると話している。結果的に、ケチュケメートでの生産コストは全体としてドイツの7割にとどまる。
\メルセデス・ベンツはこのほか、部品共通化を進めることなどで2017年までに60億ユーロの経費削減を図り、原料費高騰、二酸化炭素排出量の低減対策でかさむコストを相殺する方針だ。また、営業利益率を昨年の9%から2013年までに10%以上へ引き上げる目標を掲げている。
\ケチュケメート工場の総工費は8億ユーロと、ハンガリーのグリーン投資としても大型で、政府は297億フォリント(1億150万ユーロ)の助成を実施した。4年分の税収で
\工場操業による雇用創出効果は直接雇用で2,500人、間接雇用は1万人に上る。さらに住宅需要の拡大による建設ブームが予想され、人口11万人のケチュケメートは景気好転に期待をかける。
\また、現地報道によると同工場の生産規模はハンガリー国内総生産の0.5~0.8%に相当し、政府の景気対策を側面から支え、経済のマイナス成長が食い止められる可能性もあるという。
\ \■欧州の自動車生産拠点、再編へ
\調査会社のLMCオートモーティブによると、欧州では自動車生産能力が過剰で、工場の平均稼働率は今年、昨年の71%から65%に悪化すると予想される。余剰能力は全社合わせて推定1,000万台にも上る。
\しかし、バークレーズの自動車アナリストであるマイケル・ティンダル氏は、このような状況のなかでも、高級車メーカーの中東欧進出は意味があると話す。一方で早い時期に中東欧で現地生産を開始した量産メーカーは、欧州工場の操業をストップしなかったつけが今、回ってきているとみる。そのため、今後も生産拠点の再編が進むとの予想だ。
\フィアットは昨年、シチリア工場を閉鎖。三菱自動車も2月にオランダ工場の操業を年末で停止すると発表した。
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