2012/5/2

ハンガリー

欧州委、ハンガリーを欧州司法裁に提訴

この記事の要約

欧州委員会は25日、欧州司法裁判所(ECJ)にハンガリーを欧州法違反で提訴することを決定した。同国の法律が司法とデータ保護当局の中立性を侵害しているとし、裁判を通じて法改正を求めていく。一方で、中銀法については、ハンガリ […]

欧州委員会は25日、欧州司法裁判所(ECJ)にハンガリーを欧州法違反で提訴することを決定した。同国の法律が司法とデータ保護当局の中立性を侵害しているとし、裁判を通じて法改正を求めていく。一方で、中銀法については、ハンガリー政府が約束した修正で欧州法への適合が確保されると判断し、提訴を見送った。これにより、ハンガリーは欧州連合(EU)および国際通貨基金(IMF)と、金融支援に向けた交渉を再開できることとなった。

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司法の独立では、裁判官の退職年齢を従来の70歳から62歳に引き下げたことが問題となった。国内の裁判官の10%に当たる274人が解任されることになり、年齢による差別の禁止に違反しているとされた。

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データ保護当局の新設については、改組にともない、任期満了を待たず情報保護委員長を解任したことが問題となっている。

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中銀法については、争点の一つとなった中銀総裁の減俸でハンガリー側が譲らなかったにもかかわらず、提訴が見送られた。この背景には、スペイン財政・経済の深刻な状況が改めて確認されたことや、オランダ連立政権の崩壊、フランス大統領選で社会党のオランド候補が優勢であることなど、欧州債務危機の解決に向けて不安要素が次々と浮上していることがあるとみられている。欧州委はハンガリーの財務危機を自ら招くような事態を避けた、という理屈だ。

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一方、ハンガリー側も緊急に必要としている金融支援を受けるため、中銀法に関しては妥協を多く受け入れたという事情がある。

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オルバン首相が議会における与党の圧倒的優勢を武器に制度改革を実行に移して以来、欧州委とハンガリーの関係は緊張状態が続いている。今回挙がった3つの問題のほかにも、報道の自由を大きく制限するメディア法をめぐって過去に摩擦(まさつ)が生じた。また、財政赤字目標の達成に向けた努力が不十分として、欧州委は今年2月、加盟国のインフラ整備などを支援する「結束基金」の5億ユーロ弱について支給を凍結することをEU閣僚理事会に勧告している。

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■フォリント相場上昇も予断許さず

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ハンガリーはEUとIMFに150億~200億ユーロの融資枠供与を求めている。国債金利を低く抑え、通貨フォリントの安定を図るためだ。

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フェレギ無任所相は、融資交渉に重要な問題であれば、政府は税法を含め、いかなる点についても話し合いに応じる用意があると交渉に積極的な姿勢を示した。また、この類の融資交渉は通常数週間を要するが、国際金融をめぐる状況が難しいことから、通常よりも長くかかる可能性があると語った。

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交渉再開のニュースが報道された直後にフォリントの為替相場は急上昇し、国債の保証コストも低下した。ただ、アナリストらは過去の経過をみても、現時点で警戒を解くわけにはいかないとみている。

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ハンガリーは4カ月の交渉停止による借入コスト上昇で、3億3,000万ユーロの追加負担を強いられたとみられている。

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