メドベージェフ首相は22日、プーチン首相時代に資源政策を担当したイーゴリ・セチン前副首相をロスネフチの社長に任命した。同時にプーチン大統領はロスネフチを「戦略的重要企業」に認定した。これにより、ロスネフチは大統領に直属することとなった。すでに資源企業を民営化の対象から除外することも決まっており、政治と資源産業との二人三脚は今後も続きそうだ。
\セチン氏は2003年のユコス解体・売却を指揮。04年、ユコスの資産を買収して国内最大の石油会社にのし上がったロスネフチの代表監査役に就任した。08年からはプーチン内閣の副首相としてエネルギー政策を統括し、ロスネフチのロビー活動の再先鋒となった。メドベージェフ大統領(当時)の方針で閣僚と国営企業の幹部の兼任が禁止されたため、昨年、監査役代表を辞任したが、1年を待たずして再び経営の座に復帰した。
\今回の社長就任は、周到な準備の結果とみられている。すでに製油と財務を担当するフョードロフ第一副社長など、複数の重役が辞任に追い込まれている。その空席は腹心の部下で固めるつもりのようだ。
\ロスネフチは昨年の生産量が1億1,900万トンとロシアの原油生産の約20%を占める最大手。北極圏の主要油田を保有する。ユコス資産の買収で国内トップに躍進して以来、セチン氏の庇護の下、ガスプロムと並んでロシア経済を担う企業に成長してきた。
\ロシアは資源大国だが、海底油田・ガス田が原油・ガスの総生産量に占める比率はそれぞれ3%、6%にしかならない。政府はロシア領海に眠る化石資源が世界埋蔵量の20%に相当するとみており、減税措置などの適用で開発奨励に力を入れている。そのカギとなるのが国外企業との提携による深海資源開発ノウハウの獲得だ。
\ロスネフチは昨年、BPとの大型提携を試みたが破たん。その後、国外企業との提携モデルを策定した。その内容は、(1)国外企業の出資比率は33.33%(2)国外企業が探索費用を負担(3)国外企業の欧米におけるプロジェクトにロスネフチが参加――というものだ。これに沿い、先月中旬から今月初めにかけて、米国のエクソン・モービル、イタリアのエニ、ノルウェーのスタトイルとの提携が成立した。これらのプロジェクトの投資総額は350億~400億米ドルと見積もられている。
\(3)についてロスネフチは、事業の国際展開に向けた足がかりと位置づけているが、生産安定化など国内事業で課題を抱えており、急速な国際化はないというのが専門家の見方だ。
\海底資源の開発はリスクが大きい。そのリスクを分散するため、ロスネフチは国内競合にもプロジェクト参加を呼びかけた。これに対し、ルクオイルとTNK-BPが関心を示している。
\エクソン・モービルは北極圏のカラ海と黒海の探索事業に32億ドルを投じる。ロスネフチによれば、カラ海の推定可採埋蔵量は石油で360億バレル、ガスも含めると1,100億バレルに上る。これは、エクソン・モービルの持つ確認埋蔵量の4倍に当たる。
\スタトイルはバレンツ海および太平洋沿岸の4カ所の開発に参加し、25億ドルを投資する。エニの投資額も20億ドルに上る。
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