ルーマニア憲法裁判所は21日、先月29日に実施された大統領罷免の是非を問う国民投票の無効を宣言した。投票率が成立要件である過半数に届かなかったためだ。これにより、バセスク大統領は職務に復帰できる見通しとなった。ただ、大統領とポンタ首相との権力闘争が収まる気配はなく、決着が付くのは早くても11月の議会選挙後となるもようだ。
\国民投票の投票率は46.23%で、投票者の87.52%が解任を支持した。その後、ポンタ首相とアントネスク内相は、有権者リストに不備があり、実際は投票率が50%を超えていたと主張していた。リストに掲載されている1,830万人のうち、すでに死亡したり、外国へ移住したりしている人が350万人に達するとされた。
\憲法裁判所は政府の主張を受けて審査した結果、死亡者3万人をリストから除外した。しかし、それでも投票率は過半数には届かず、無効の判決を下した。
\ポンタ首相は判決を受け入れるとしながらも、「違法かつ不公平で、政治的動機による」判決と批判し、大幅な憲法改正を議会に働きかけるとの意向を明らかにした。
\バセスク大統領の復帰がいつになるかは未定だ。判決は官報での公表で確定するが、その手続きには両院合同会議が憲法裁判長によって報告を受けることが必要なためだ。大統領と首相の対立が激化したここ数カ月、政府は一度となく判決公表を遅らせ、その間に新しい措置を実行に移してきた。ルーマニアのマコヴェイ欧州議員は今回の判決を、「ルーマニアに司法国家を取り戻すもの」として歓迎しながらも、政府がまた「違法なトリック」を用いるのではと懸念している。
\ルーマニア議会は先月初め、バセスク大統領が憲法に定める職権を乱用しているとして大統領の職務停止を与党の賛成で可決した。これにともなう手法が司法への介入に当たるとして、欧州連合(EU)はポンタ政権を強く批判。特に、憲法で定められた国民投票の成立要件である過半数の有権者の参加を政令で無効としたことを大きな問題として、政府に撤回させた経緯がある。
\経済低迷にあえぐルーマニアは政治権力闘争で混迷が深まっている。通貨レウが下落して国債の金利が高騰。財務省が発行を取りやめたことも1度にとどまらなかった。国際通貨基金(IMF)は先ごろ、今年の同国の経済成長予測を0.9%に引き下げた。
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