ロシアのセルゲイ・イグナチェフ中央銀行総裁は20日、不正資金の推定流出額が昨年、国民所得の2.5%に当たる490億米ドルに上ったと発表した。同行の実施した調査で明らかになった。政府は他の調査で推定額がずっと小さいことから、中銀の数値は大きすぎるとする見解を示している。
\現地経済紙『ベドモスチ』の一面インタビュー記事で総裁は、不正送金の半分以上に同一グループが係わっていることが判明したと言明。「一組織が全ての不正送金を仕切っているという印象を受ける」と話した。また、警察が真剣に捜査すれば犯人は見つかるはずとの見解を示した。
\現実の対策としては◇銀行に不審な口座の閉鎖を認める緊急法の発布◇起業条件の厳格化――を求めた。
\イグナチェフ総裁は今年6月に11年の任期を終えて退任する予定だ。政府との対立はあまりなかったが、今回の調査結果はプーチン政権下の「クレムリン・キャピタリズム」の無法状態とシステム内の汚職を告発する内容となった。
\ \■不正送金が横行
\ \汚職防止を目指す活動家らによると、不正送金の方法は数知れず存在する。また、銀行の中には法の網をくぐりぬけて資金洗浄する「現金化」の仕組みを提供するところもあるという。
\消息筋によると、国営の大企業が巨額の金を国外に持ち出す傾向にあるのに対して、新興財閥(オリガルヒ)はキプロスなどにあるオフショア企業を通じて事業を運営している。
\米国の民間研究機関グローバル・フィナンシャル・インテグリティー(GFI)の調査によると、2004年以来、ロシアと外国の間を行き来した不正資金は年平均620億米ドル相当に上ったと推測される。これは1992~2003年の平均270億6,000万ドルの2倍以上だ。これらの資金は汚職や人身売買、兵器密輸など犯罪行為で稼がれているという。
\最近の例としては、2008年に内務省幹部らによる巨額横領を告発したセルゲイ・マグニツキー弁護士が脱税容疑で逮捕され獄死した事件がある。
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