ウィーン国際比較経済研究所(WIIW)が7日発表した中東欧3カ年経済見通しによると、欧州債務危機の影響で中東欧圏の経済は停滞が余儀なくされそうだ。欧州連合(EU)新規加盟10カ国の経済成長率は今年1.2%、来年2.3%、再来年3%の予測。ただ、これはあくまでもユーロ圏経済が来年から成長に転じるという欧州委員会など国際機関の予測を前提としたものだ。WIIWのミヒャエル・ランデスマン所長は、この予測には「非常に懐疑的」な立場を示し、実際の成長率が今回の予測を下回る可能性が大きいことを示唆した(巻末のグラフも併せて参照)。
\WIIWの中東欧専門家であるヴァシリ・アストロフ氏は、中東欧経済について、◇輸出不調◇高失業率◇内需は現状維持か縮小◇銀行の新規融資減少◇設備投資の先送り――といった点を挙げ、「良い材料は一つもない」と言い切った。銀行の融資縮小も加わり、内需拡大は見込めない。このため、中東欧諸国は西欧の景気回復を待つのみだ。
\中東欧諸国は重要な取引先であるEU経済の不調の影響をまともに食らう。今年、マイナス成長が見込まれるのはクロアチアとスロベニアの2カ国にとどまるが、ほかの国々もほとんどがかろうじてゼロを上回るレベルとなる。
\ユーロ圏への経済依存度の低い国ほど経済見通しは明るい。これにはバルト諸国、トルコ、ロシアが含まれる。逆に最も見通しが暗いのはクロアチアとスロベニア。南東欧諸国はイタリアなど危機のさなかにある南欧との結びつきが強く、打撃が強い。一方でユーロ圏でも比較的堅調なドイツとの取引が大きいポーランドやスロバキアでは、景気の大幅減速は避けられないものの、南東欧に比べれば影響は小さい。
\クロアチアでの公務員減員、セルビアでの大量解雇など、国によっては過去数年で失業者が大量に増えた。大幅に上昇した失業率が減少に転じるには3%以上の経済成長が続くことが必要だ。しかし、経済成長がこのレベルに達するのは、最も楽観的な予測でも2015年となる。
\中東欧の経済不振を受けて、西欧の銀行は同地域における資産総額が減少する見通しだ。融資返済を受ける一方で、新規融資は縮小する。特にルーマニア、スロベニア、ハンガリーでその傾向が強い。一方でポーランド、スロバキア、チェコでは資産総額はほぼ一定を保つ。ただし、中東欧地域における新規融資の需要は現在、あまり大きくない。
\ \■欧州経済の失われた10年
\ \WIIWでは、欧州経済が金融危機前の2008年の水準に回復するのは早くて2017年になると予測する。
\その理由として、日本と同様、金融業界再編が進んでいないことを挙げている。ランデスマン所長は、「(WIIW研究員のような)経済専門家の目から見ると、改革に向けた政治的努力は及び腰で、焦点がずれていると思われるケースもあった」と指摘。増税と財政緊縮の挟み撃ちでユーロ圏経済は成長を妨げられると話した。
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