中東欧の新興国の信用格付けが財政状況を反映した動きを見せている。不動産バブルがはじけたスロベニアの信用は下がる傾向にあり、トルコは「投資適格」に仲間入りしつつある。スロバキアは継続して良好な評価を維持している。
\フィッチは17日、スロベニアの長期信用格付けをこれまでの「A-」から「BBB+」へと一段階引き下げた。銀行が抱える巨額債務から生じるリスクが理由だ。見通しは「ネガティブ」で、金融危機が先鋭化すればさらなる格下げの可能性があると指摘した。
\フィッチは銀行再建に必要な費用を政府推定額の2倍に当たる28億ユーロと試算する。また、同国の国内総生産(GDP)が今年2%、来年は0.2%縮小するとみる。財政赤字はGDP比で5%、国家債務は2014年までにGDPに72%に膨らむとの予想だ。
\政府は今月、欧州連合(EU)からの金融支援なしで財政を再建するため、◇国営大手2銀行の増資◇国営企業15社の民営化◇付加価値税を22%へ2ポイント引き上げ――といった施策を実施する方針を示した。
\なお、スロベニアは国債発行手続き中の先月30日にムーディーズが同国の信用格付けを2段階引き下げて「投機的」と評価したことを問題として提訴する構えだ。結果的には27億ユーロ相当の米ドル債発行に成功したが、財務省は混乱を防ぐために手続きを48時間中止し、金利もやや高めとなった。
\一方、ムーディーズによるトルコの国債格付けは17日、「投資適格」の「Baa3」へ1段階引き上げられた。格上げの理由として、2009年以降、GDP比の国家債務が10ポイント減の36%まで縮小し、今後も改善する見込みであることが挙げられている。
\トルコが「投資適格」の評価を受けるのは昨年11月のフィッチに続くものだ。信用上昇で17日の国債金利は4.64%の史上最低を記録した。年金組合など安定的運用を目指す機関投資家の需要が増えそうだ。
\フィッチのスロバキア国債の格付けは15日、「A+」に据え置かれた。見通しは「安定的」とした。経済が金融危機後に迅速な回復をみせたことや、欧州債務危機の中で健闘していることが評価された。一方で長期的な財政緊縮への取り組みが弱まっていることに懸念を示している。(東欧経済ニュース5月15日号「スロベニアが国営企業15社を売却、財政再建で金融支援要請回避へ」を参照)
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