2013/7/3

総合・マクロ

ナブッコ計画、ついに中止

この記事の要約

カスピ海地域のガスをロシアを迂回して欧州へ輸送する「ナブッコ・パイプライン」計画が事実上中止された。計画を先導してきたオーストリアOMVは6月26日、主要調達先と位置付けてきたアゼルバイジャンのシャーデニス第2フェーズ開 […]

カスピ海地域のガスをロシアを迂回して欧州へ輸送する「ナブッコ・パイプライン」計画が事実上中止された。計画を先導してきたオーストリアOMVは6月26日、主要調達先と位置付けてきたアゼルバイジャンのシャーデニス第2フェーズ開発の企業連合が、欧州供給ルートとしてナブッコを選択しなかったと発表した。競合プロジェクトのアドリア海横断パイプライン(TAP)が選ばれたことになる。ロイス社長は緊急記者会見で、計画が「一旦終わった」と話し、断念することを明らかにした。

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■ナブッコ計画の試練

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ナブッコ計画は2002年にOMVがハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、トルコのエネルギー企業と提携して立ち上げた。2006年、ロシアとウクライナの対立で欧州へのロシア産ガス供給が急減したのを機に、欧州連合(EU)がエネルギー戦略の柱の一つとして推進を決めた。ロシアへのガス依存を弱めるのが狙いだった。

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当初はトルコからオーストリアまで全長3,000キロメートルのパイプラインを建設することを計画していた。一国への依存を避けるため、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、イラク北部を主要調達先と位置付けたが、ロシアがトルクメニスタンに圧力をかけて同国が供給源となるのを妨害。複数の調達先との調整作業は困難を伴い、計画は遅延を続けた。

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このため、アゼルバイジャンが自らパイプライン建設に乗り出した。昨年、トルコとアナトリア横断天然ガスパイプライン(TANAP)の敷設で政府間合意を結んだ。

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EUのエティンガー委員(エネルギー政策担当)もカスピ海地域のガスの輸送路としてナブッコにこだわらない立場を表明し、ナブッコ実現の見通しはますます暗くなった。

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これらの動きを受けて、ナブッコ企業連合は昨年、工事区間を縮小する「ナブッコ・ウェスト」計画に方針を転換。ブルガリアのトルコ国境からルーマニア、ハンガリーを経由し、天然ガス輸送のハブ基地であるオーストリア・バウムガルテンに至る全長1,300キロメートルの建設を予定していた。TAPと比べると、全ての南東欧諸国への供給がすぐに可能となることが長所とされてきた。

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■低コストが魅力=TAP

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TAPは独エーオン・ルールガス、スイスのアクスポ、ノルウェーのスタトイルが推進する。ギリシャのトルコ国境からアルバニアを経由してイタリアに至る。今回の決定で、2018年からアゼルバイジャン産のガスを輸送することが決まった。年間輸送能力は100億立方メートルで、2本目のパイプラインを敷設すれば倍増も可能だ。

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シャーデニス企業連合の決定では、建設区間の全長が約500キロメートルとナブッコの半分以下でコストが低いこと、イタリアのガス価格が高水準であることが有利となったもようだ。

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アゼルバイジャン国営石油SOCARが先月下旬、ギリシャのガス供給公社(Desfa)買収の意向を表明した時点で、業界関係者はTAPに軍配が上がったとみていた。DesfaのパイプラインがTAPの一部を構成し、シャーデニスのガスを輸送することになるためだ。

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シャーデニス第2フェーズはSOCAR、英BP、ノルウェー・スタトイルなどの企業連合が開発している。SOCARの出資比率は10%だが、アゼルバイジャンにおけるエネルギー開発の最終決定権はSOCARにあると言われている。

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ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ
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