独エネルギー最大手のエーオンが、中欧の発電所を他の地域に移築することを検討している。電力価格の低下や排出権価格の下落でとくにガス発電所の採算性が悪化しているためで、資材やタービンを移動するコストを差し引いても採算がとれる地域があればそこで稼働させたい考えだ。独語版『ウォールストリート・ジャーナル』紙が複数の消息筋の情報として伝えた。
\消息筋によれば、すでに移築費の算定作業が始まっており、具体的には、スロバキア・マルジェニツェの天然ガス・コジェネレーション発電所をトルコなどへ移築することが検討されているという。
\エーオンは今月15日、マルジェニツェ発電所の稼動を10月に停止すると発表したばかりだ。一方で、今年4月にはトルコ同業のエネルジサの株式50%を取得し、2020年までに同社の発電能力を当時の2ギガワットから8ギガワット弱まで引き上げる方針を明らかにしている。この点からも、トルコへの発電所移築はエーオンの戦略にかなうものと言える。
\ただし、発電所の移築は膨大なコストがかかり、実現するかどうか確かではない。アーンスト&ヤングのエネルギー専門家であるケストナー氏によれば、比較的小規模のガス発電所であれば移築が選択肢になることもあるが、電力会社にとって「最後の手段」であることは間違いない。
\エーオンの本国ドイツではエネルギー政策の転換で原発廃止・再生可能エネルギー促進が図られている。再可エネの利用では天候などの影響で発電量が減った場合に、これを補完するバックアップ電源の確保が肝要だ。
\しかし、そのカギを握るガス火力発電所は、不況で電力と温暖化ガス排出権の価格が低下したために採算が悪化している。エーオンのタイセン社長はいつまでも赤字のまま運転するわけにはいかないとして、欧州にある総出力11ギガワットの発電所の採算性を確認し、運転停止も辞さない姿勢を打ち出している。(東欧経済ニュース7月17日号「独エーオン、スロバキアの高効率ガス発電所の運転停止」を参照)
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