2014/6/11

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

サチ首相続投へ、コソボ議会選挙

この記事の要約

コソボ共和国で8日行われた議会選挙(定数120)は、与党・コソボ民主党(PDK)が再び第1党の地位を確保した。ただ、これまで連立を組んできた新コソボ同盟(AKR)が阻止条項をクリアできずに議席を失ったため、ハシム・サチ首 […]

コソボ共和国で8日行われた議会選挙(定数120)は、与党・コソボ民主党(PDK)が再び第1党の地位を確保した。ただ、これまで連立を組んできた新コソボ同盟(AKR)が阻止条項をクリアできずに議席を失ったため、ハシム・サチ首相の続投に向けては他の野党との協力が必要となる。投票率は43.2%と低く、政治に対する国民の失望が広がっている様子が浮き彫りとなった。

中央選管が開票率99.8%時点で発表した得票率は、PKDが30.7%で2010年の前回選挙に比べて1ポイント強、減少した。野党第1党のコソボ民主同盟(LDK)は25.8%(1.1ポイント増)。以下、「自己決定(VV)」が13.5%(0.8ポイント増)、コソボ未来同盟(AAK)が9.6%(1.4ポイント減)で続いた。今年2月にPDKから分離して結党した「コソボのためのイニシアチブ(Nisma)」は5.2%と、阻止条項が義務付ける5%以上の得票に成功し、議席を得る見通しだ。

野党は選挙戦中、いずれもPKDとの連立拒否を公約していたが、9日の時点ですでにAAKとNismaが態度を軟化させている。現地シンクタンク「発展のための民主主義(D4D)研究所」のマラゾグ所長は、これら3党と、一定議席を割り当てられている少数民族政党が連立し、66議席を確保できると予想する。交渉が順調に進めば、夏季休暇シーズン前の組閣もありうるという。

中央選管が発表した投票率は43.2%で、前回選挙から4ポイント以上低下した。セルビア系住民が多く、過激派がボイコットを呼びかけた北部では32.8%にとどまったもようだ。

その背景には、08年の独立から6年経った今でも、国民の貧困状態が続いていることがある。生活の苦しさに加え、汚職がはびこり司法制度や医療制度が機能せず、政治には変化を期待できないと考える国民が増えているようだ。

一方、(1)選挙が平和裏に行われた(2)不正がほとんどなくなった(3)セルビア系住民の投票率が大幅に増えた――といった点からは、コソボの民主化が小幅ながらも前進している様子が認められる。(3)では、コソボとセルビアが昨春、関係正常化で合意したことが大きく貢献した。セルビアのヴチッチ首相がコソボのセルビア系住民に投票を呼びかけたことで、北部の投票率は前回の1.5%から飛躍的に上昇した。(東欧経済ニュース2013年4月24日号「セルビアがコソボと関係正常化で合意、6月にEU加盟交渉開始決定へ」を参照)