ポーランドでは依然として電気自動車(EV)の普及が遅れている。価格が高水準であるほか、インフラ整備が遅れていることが背景にある。ただ、欧州連合(EU)の助成をばねに自治体や公共交通事業者がEVの購入に動いており、これが普及への第一歩となる可能性がある。
ポーランドのEV乗用車の登録台数は昨年、わずか88台にとどまった。充電スタンドが不足しており、買い替えを検討する消費者・公的機関の聞き取り調査でも「EV購入は選択肢にない」という声が多数派を占めている。
一方で、ポーランドは公共交通近代化でEUから23億ユーロの割り当てを受けている。また、「環境・インフラ」実施プログラム(OP)でさらに数十億ユーロの助成が受けられる見通しだ。すでにカトヴィツェやワルシャワ、グダニスクで導入計画が具体化し、国内メーカーのソラリスはワルシャワ市などからEVバスを受注した。
今後のプロジェクトとしては、ワルシャワ市が来年末までにEVバスを20台追加注文するほか、北西部のイノヴロツワフ市も年内にEV2台の調達を狙っている。東部ルブリン市は助成獲得額に応じて最大77台のEVバスを購入する計画で、すでに地元のトラクターメーカー、ウルススと提携してプロトタイプを完成させた。ウッジ総合病院もバス・特殊用途自動車メーカーのAMZクトノと共同で車両を設計中だ。
一般向けでは、自転車・小型オートバイを製造するロメト(Romet)がこの春、原付四輪車(ミニカー)を5,500ユーロ以下で発売する。14歳から取得可能な原付免許で運転できる。また、年末をめどに、これより大きいモデル「7E」を市場投入する。当初はフランス、イタリア、ドイツを主な市場と位置づける。国内ではリース事業を立ち上げ、このなかでEVモデルを提供していく。
普及の課題は充電インフラ問題だ。EVバス100台を夜間2時間で充電するには2万キロワットの出力が必要になり、電力確保が難しい。
代替案として、ソラリスは自動充電システムの開発を手がけ、すでに燃料電池バス2台を独ハンブルク市に納入した。また、国立研究開発センターからの支援(150万ユーロ弱)を受けて、全長24メートルのハイブリッド(HV)バスの開発を進めている。近くプロトタイプの組立を開始する予定で、来年11月までのプロジェクト支援延長を申請している。