ロシアが欧州連合(EU)向けの天然ガス政策を見直す姿勢を見せている。国営ガスプロムは6月28日、関係が悪化していたウクライナ側と新たな輸送契約に関して交渉する用意があると表明した。現行契約が失効する2019年末に同国経由の天然ガス輸送を打ち切る計画だったものの、代替輸送能力が確保できるかが微妙なためとみられる。
ガスプロムのミレル社長によると、方針転換はプーチン大統領の判断に沿うものだという。ただ「受け入れがたいような契約は結ばない」とし、ウクライナ側の条件を鵜呑みにはしないとけん制した。
ロシアとウクライナは2000年代半ば以来、ガス価格をめぐって対立を繰り返してきた。現在も、未払い代金や値上げに関する問題が先鋭化している。
ウクライナは天然ガス需要の約半分をロシアに頼る。一方、ロシアはEU向け天然ガスの40%をウクライナ経由で輸出している。バルト海パイプライン「ノルド・ストリーム」の開通で依存率は低下しているものの、その重要性は失われていない。
ロシアが代替ルートとして敷設を計画するトルコ・ストリームでは、トルコ政府との契約がまだ成立していない。ノルド・ストリームの拡張計画も、EUの欧州委員会が「既存インフラの輸送能力は十分」と否定的で、実現するかどうかは不透明だ。このため、ロシア政府は従来の強硬姿勢を和らげ、ウクライナルートを維持する選択肢を残すことにしたとみられる。