2015/8/5

総合・マクロ

ロシア経済、制裁による影響はGDPの9%に相当=IMF

この記事の要約

国際通貨基金(IMF)は3日、ウクライナ紛争をめぐる欧米諸国の対ロ制裁とロシアによる報復措置が続いた場合、ロシア経済が受ける影響は合計で国内総生産(GDP)の9%に相当するとの見解を示した。中期的な経済成長見通しは年1. […]

国際通貨基金(IMF)は3日、ウクライナ紛争をめぐる欧米諸国の対ロ制裁とロシアによる報復措置が続いた場合、ロシア経済が受ける影響は合計で国内総生産(GDP)の9%に相当するとの見解を示した。中期的な経済成長見通しは年1.5%にとどまる。通貨ルーブル安で一時的に輸出競争力は高まるが、より確実な経済成長には構造・制度改革や財政緊縮が不可避とみている。

IMFは、ロシア経済は制裁の打撃から立ち直る兆しを示しているものの、◇ロシア企業による国際金融市場での資金調達の制限◇エネルギー先端技術の禁輸措置――など、継続して課されている措置の影響は今後も残ると指摘する。

制裁によって経済が縮小する度合いは、制裁直後の段階でGDPの1~1.5%だったのが、今後数年で9%に拡大する可能性がある。中期的な年間成長率は1.5%にとどまり、2008年の金融危機前の実績(約7%)を大きく下回る。

今後の経済の見通しについては、今年は3.4%縮小するが、来年は通貨ルーブル安による競争力向上や国外需要の拡大などが奏功してプラス0.2%まで回復すると予想する。

インフレ率は今年末までに12%、来年末までに8%へ減速するとしている。中銀の金融政策については、インフレ動向・見通しを下敷きに政策金利を引き下げる方針は基本的に正しいが、利下げのペースはより慎重であるべきと提言した。

ロシアでは、◇構造改革の停滞◇投資の低調◇人口減少――などが原因となり、すでに2014年始めの段階で景気減速の兆しがみえていた。現在の大幅な景気後退に対外要因が影響していることは確かだが、同国の抱える根本的な問題に取り組むことなしに中長期的な経済成長を確保するのは難しい。

具体的には、政府による経済への関与を減らし、不要な規制を廃止するなど競争促進に努めることや、財産権の保護、司法の独立などを進めていくことが肝要だ。

また、財政についても原油の市場価格に対応しやすい予算編成に移行することが求められる。これに加えて、年金改革、公益料金助成の削減、社会保障の効率化といった確実かつ大幅な財政緊縮策の実行が望まれる。