トルコのエルドアン大統領は7月29、30日に中国を訪問して同国の習金平国家主席など政府要人と会談し、両国の経済関係強化で合意した。トルコの対中貿易赤字の解消を目標に、取引高を現在の4倍強の1,000億米ドルに拡大することを目指す。中国政府によるトルコ系少数民族政策をめぐり両国間の緊張が高まっていたが、経済を優先して関係を修復した形だ。
両国は、アジア・欧州の交易拡大を目指す中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」の実現に向けて協力してインフラ整備に取り組むほか、原子力・宇宙開発分野でも提携することを確認した。また、トルコにおける中国製ミサイル防衛システムの導入についても交渉を継続する。
「一帯一路」構想についてエルドアン大統領は、これまでの成果として、イスタンブール海底地下鉄トンネル(マルマライトンネル)が開通したほか、アゼルバイジャン・バクー~グルジア・トビリシ~トルコ・カルスの各都市を結ぶBTK鉄道や、トルコを横断するエディルネ~カルス高速鉄道がすでに試験運行に入っていることに触れた。また、インフラ整備では中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対するトルコの支援を強調した。
同大統領はまた、両国間貿易について、トルコの対中貿易赤字が220億ドルに上っていることに触れ、中国企業の対トルコ投資の拡大や中国人のトルコ旅行促進に努める姿勢を示した。中国元・トルコリラ建ての取引の可能性も検討していく方針だ。
トルコ系でイスラム教徒のウイグル人に対する中国当局の扱いに関連し、トルコには反中感情が存在する。最近では断食月(ラマダン)に断食を禁じたとの報道に対してトルコの民族主義者が抗議行動を組織した。また、タイ政府がウイグル人亡命希望者を中国に強制送還した後、在イスタンブール・タイ領事館が襲撃される事件も起こっている。