2015/8/5

コーヒーブレイク

高学歴層も移住を希望~ポーランド

この記事の要約

ポーランドで人口流出が相変わらず問題となっている。在外者数は公式統計で220万人、中には300万人という推定もあり、人口3,800万人の同国にとっては無視できない数値だ。さらに懸念されるのは、最近になって高学歴者や専門職 […]

ポーランドで人口流出が相変わらず問題となっている。在外者数は公式統計で220万人、中には300万人という推定もあり、人口3,800万人の同国にとっては無視できない数値だ。さらに懸念されるのは、最近になって高学歴者や専門職従事者に移住希望者が増えていることだ。堅調な経済成長にも関わらず、能力ある人材が国外に目を向けるのはどうしてなのだろうか。

18~31歳の学生1,600人を対象とした最新の調査によると、卒業後に外国で就職したいと回答した人は46%にも上った。また、ポーランド人全体の20%が今後12カ月以内に国外での就職を考えているという。

ポーランドは2008年の金融危機後もプラス成長を続け、失業率は欧州連合(EU)加盟前の2003年に20%だったのが、2015年6月には10.3%へほぼ半減した。それでも人口流出がとまらないのは労働・生活条件に理由があるようだ。

移住したい理由をみると、「賃金」が78%で最も多い。これに「生活水準」が44%で続く。「医療水準」も29%に上っている。

さらに、「国内に自分に合う仕事がない」という人は37%、「外国のほうが職業研修など、スキルを磨くチャンスが大きい」も37%で、長期的なキャリアを見据える若者の姿が思い浮かぶ。

EU加盟直後は労働者や職人が移住の中心で、国外滞在も一時的なものと位置づけられていた。しかし、現在は専門職が増加し、結婚・出産を含めて外国で生活することを念頭に置いていることも珍しくなくなった。

実際、在外者の永住希望者は多い。移住先として一番人気の英国では滞在者の54%が永住を希望。2番目に人気が高いドイツでも40%を占めている。

野党・右派「法と正義」のベアータ・シドゥウォ首相候補は、シリア人難民受け入れに反対するなかで「外国にいるポーランド人の帰還が先決」と訴えている。難民への懐疑心が強い同国の選挙戦略としては「あり」なのかも知れない。ただ、どうしたら帰国を促せるのか、シドウォ候補も具体策には触れていない。