2019/2/20

総合・マクロ

EU3機関がガス指令改正案で合意、「ノルド・ストリーム2」見直しも

この記事の要約

欧州議会と閣僚理事会、欧州委員会の3機関は12日、欧州連合(EU)域外から天然ガスを運ぶパイプラインに対する規制案の内容で暫定合意した。2009年に採択された「域内ガス市場の共通ルールに関する指令(ガス指令)」を改正し、 […]

欧州議会と閣僚理事会、欧州委員会の3機関は12日、欧州連合(EU)域外から天然ガスを運ぶパイプラインに対する規制案の内容で暫定合意した。2009年に採択された「域内ガス市場の共通ルールに関する指令(ガス指令)」を改正し、域外からEU内にガスを運ぶ全てのパイプラインに域内のパイプラインと同じルールを適用する。法改正には欧州議会と閣僚理の正式な承認が必要だが、所有権分離などを柱とする共通ルールが適用された場合、ロシア産天然ガスをバルト海経由で直接ドイツに輸送する新たなパイプライン計画「ノルド・ストリーム2」は抜本的な見直しを迫られる可能性がある。

ノルド・ストリーム2はロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが主導する全長1,200キロメートルのパイプライン計画。同プロジェクトには英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル、独エーオン、オーストリアOMV、仏エンジーが出資しており、19年末の稼働を目指して建設が進められている。露独間では11年秋から「ノルド・ストリーム」が稼働しており、総工費95億ドルのノルド・ストリーム2が完成すると、ドイツへのガス供給量は現在の2倍(年間1,100億立方メートル)に拡大する。

現行のガス指令が域外からEU内に天然ガスを運ぶパイプラインに適用された場合、事業主体はパイプラインの所有とガス供給の分離を求められる。また、非差別的な料金の適用や、年間供給量の最低10%を第三者に開放する義務を負う。ノルド・ストリーム2に関しては、ガスプロムがパイプライン事業とガス供給事業の両方を担う前提で計画が進められているため、規制案が採択されると大きな打撃を受けることになる。

域外からガスを運ぶ全てのパイプラインが規制の対象となるが、厳格な規制の適用に強く反対するドイツに配慮して、既に稼働しているノルド・ストリームをはじめとする既存のパイプラインに関しては、域外からガスを輸入する加盟国(ノルド・ストリームの場合はドイツ)に所有権分離をはじめとする共通ルールの適用を除外する権限を与える。ただし、例外措置によって公正な競争が阻害されないことが条件となる。