2021/6/2

テクノロジー

世界初、ポーランドでペロブスカイト太陽電池セルの商業生産開始

この記事の要約

ポーランドのサウレ・テクノロジー(Saule Technologies)はこのほど、次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池セルの商業生産を世界で初めて開始したと発表した。同電池は製造コストが小さくて発電効率 […]

ポーランドのサウレ・テクノロジー(Saule Technologies)はこのほど、次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池セルの商業生産を世界で初めて開始したと発表した。同電池は製造コストが小さくて発電効率が高い上、パネル型の結晶シリコン電池では対応できなかった曲面にも設置できるのが特長だ。用途が限りなく広がり、ゼロ・カーボン社会への移行を担う重要技術とみられている。

ブロツワフの工場は5,000平方メートル規模。実験環境で確立されたプリント工程を自動化した試験生産ラインを擁する。最初の製品はIoT(モノのインターネット)端末向け。受注が現時点ですでに生産能力を上回っているという。試験ラインの操業と同時に、生産能力100メガワットの量産ラインの設置も進める。

この太陽電池は、ペロブスカイト(灰チタン石)と同じ結晶構造を持つ物質をインクのように基板に塗って作る。軽量でフィルム状に形成でき、太陽光だけでなく人工光からも電気が得られる。サウレによると、値札から建物の壁面、人工衛星まで、文字通り、どこにでも設置できる。折板屋根や窓、トレーラーの幌、車体、ヨットの帆、テント、ノートパソコンの筐(きょう)体、ドローンなどへの応用も考えられる。

サウレはまた、商業生産開始と同時に、筆頭株主であるポーランドの太陽電池設置・サービス最大手コロンブスエナジーおよび欧州不動産管理大手MVGMと3者間業務提携契約を結んでいる。年内にはワルシャワ証券取引所の小規模企業取引所ニューコネクトで新規株式公開(IPO)を計画する。将来的に、欧州や日本に拠点を築く意向だ。

サウレは2014年、創業者の一人であるオルガ・マリンキエヴィツCTO(最高技術責任者)が物理学博士課程の研究で編み出したプリント製法を事業化するために設立された。この製造法は『MITテクノロジーレビュー』誌や欧州委員会などから多くの賞を受け、次世代の太陽光技術の実現につながるものとして注目を集めた。2015年にはHISの創設者として知られる澤田秀雄氏が出資した。