●黒海~ボスポラス海峡経由でウクライナ産品を輸出する提案
●ロシアは条件として西側による船舶保険の制裁解除を要求
ロシアのラブロフ外相が8日、トルコを訪問する。国連とも協力しながら、黒海における貨物船航行ルートを確保し、ボスポラス海峡経由でウクライナ生産品が輸出できるようにするというトルコの提案を受けたものだ。航路の安全が確保できれば、ウクライナ産の穀物輸送が可能になり、食料需要を国外に頼る中東やアフリカなどへの影響が緩和される。ただ、ロシアはその条件として、西側諸国が船舶保険の制裁を解くことを求めており、交渉の行方は不透明だ。
ロシアは黒海に艦船を駐留させ、ウクライナの港湾を封鎖している。プーチン大統領は5月30日のエルドアン大統領との電話会談で、中心となる課題が「黒海およびアゾフ海の安全な航路の確保と、機雷の除去」にあると話し、ウクライナからの穀物輸出を含め、貨物をスムーズに輸送できる仕組み作りでトルコと話し合う姿勢を示した。ただし、ウクライナ産の穀物をどの港から積み出す考えなのかは明らかにしなかった。
西側諸国は、ロシアのウクライナ侵攻とそれに続く自国産穀物輸出の縮小で世界の食糧危機が深刻化しつつあるとして、プーチン大統領を強く非難している。プーチン大統領側はこれに対し、穀物や肥料が国外に出荷できないのは西側の「近視眼的な」制裁のせいと主張している。
ウクライナは世界有数の穀物生産国で、昨年の小麦、大麦、トウモロコシの月間輸出量は最大で600万トンに上った。ロシア海軍の港湾封鎖を受けて、河川・鉄道・道路経由の輸送を増やしているが、3月の輸出は30万トン、4月は110万トンにとどまった。数週間後には小麦の収穫が始まるが、輸出停滞で昨年の小麦が倉庫に残り、保管場所がない状況だ。
ウクライナとロシアは合わせて小麦の国際取引市場の29%、ひまわり油の80%を占める。また、ロシアのウクライナ侵攻に協力したとしてやはり制裁にあっているベラルーシはカリ肥料の生産国で、ロシアと合わせて40%のシェアを握る。