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2010/7/21

総合 - ドイツ経済ニュース

メルケル首相が中露など3カ国を歴訪

この記事の要約

ドイツのメルケル首相は14~18日の5日間の日程でロシア、中国、カザフスタンを歴訪した。首脳会談では人権、安全保障など幅広い問題が話し合われたものの、最大のテーマは経済で、随行した300人のなかには財界関係者が多く含まれ […]

ドイツのメルケル首相は14~18日の5日間の日程でロシア、中国、カザフスタンを歴訪した。首脳会談では人権、安全保障など幅広い問題が話し合われたものの、最大のテーマは経済で、随行した300人のなかには財界関係者が多く含まれていた。世界経済が戦後最大の危機から回復に向かうなか、ドイツは急速な成長が見込まれるこれら3国との関係を一段と強化し、自国経済の繁栄につなげる戦略だ。中国では「技術移転」をはじめとする同国の経済政策に対し、メルケル首相と財界人が歯に衣着せぬ批判も行った。

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最初の訪問国となったロシアではウラル地方のエカテリンブルクでメドベージェフ大統領と会談した。両首脳が顔を合わせるのは今年5度目で、会談は和やかな雰囲気で進展。大統領は「ドイツはロシアが目指す経済近代化の理想的なパートナー」だと絶賛した。

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随行した独シーメンスのレッシャー社長は両首脳が列席するなか、ロシア国鉄RZDにローカル線車両240台を納入する契約に調印した。成約額は22億ユーロに上る。同社は風力発電分野でも現地企業Rostechnologii、RusHydroと合弁会社設立で合意している。また、独政策銀行KfWと露国有銀行Vnesheconombankはロシアの中小企業支援に向け総額1億ユーロを拠出することで合意した。

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メドベージェフ大統領は会談でドイツへの注文も伝えた。1つはビジネス上の障害となっているビザ発給手続きの簡素化で、メルケル首相も理解を示した。ただ、ビザの問題は欧州連合(EU)レベルで政策を調整する必要があり、解決には時間がかかるもようだ。

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もう1つはドイツ企業のロシア投資が活発であるのとは対照的にロシア資本の対独投資が遅々として進まないことだ。これには◇ロシアがエネルギー以外にこれと言った産業を持たない◇ドイツ企業を買収しても経営の不手際で倒産してしまう―― などロシア側の問題も大きく関与しており、メルケル首相は「ロシア資本による模範となるようなプロジェクトができれば良いのだが」と述べるにとどめた。

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中国の経済政策を独財界人も批判

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続いて訪問した中国では戦略的パートナーシップを強化することで合意した。今後は年に1度、両国首脳や閣僚レベルで様々な問題を話し合う協議の場を設ける予定だ。

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ロシア同様、ここでも両国企業の契約調印が行われた。シーメンスはガス・蒸気タービンの保守を行う合弁会社を現地の上海電気と共同で設立することで合意。ダイムラーと北京福田が設立するトラック合弁会社の契約調印には温家宝首相とメルケル首相が列席した。

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メルケル首相の訪中の間、中国サイドは友好的な関係の演出に努めた。だがこうした努力とは裏腹に、ドイツ側は中国の経済政策に対しては批判の矢を放った。

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それが頂点に達したのは西安のテーマパーク大唐芙蓉園で17日に開かれた両国の首脳と財界人を交えた懇談会だ。メルケル首相はこの場で、中国に進出する外資系企業に技術的なノウハウを現地の提携先企業に移転することを強要する政策(技術移転)を取り上げ「なるほどこれは合法かもしれないが、われわれドイツ人の考えではあまりに厳しい要求だ」と発言。そのうえで「中国企業も自らの知財権をドイツでオープンにしたくはないでしょう」と述べ、技術移転政策の不平等さを指摘した。

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メルケル首相がこうした批判を強く押し出した背景には外国企業に不利な条件を押し付ける中国の政策への不満がドイツの経済界で高まっていることがある。同席したシーメンスのレッシャー社長は公的入札で外資が落札するチャンスが少ないこと、電子・金属材料商社ヘレウスのヘレウス社長も中国政府の希土類輸出制限策を批判した。

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一方、中国側はドイツに対し、EUが中国を市場経済国と認定するよう働きかけることを要求。これに対しメルケル首相は「中国はまだその基準を満たしていない」とあっさり断った。

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カザフ近代化は独企業のチャンスに

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カザフスタンは中国、ロシアに比べると存在感が薄い。だが、石油や鉱物資源が豊富で、中央アジアでは最も経済力が高い。ドイツの中央アジア諸国との貿易取引ではその90%を同国が占める。

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カザフ政府は資源輸出で得た資金を元手に経済の近代化を進め、2030年までに先進国の仲間入りすることを目標としており、ドイツ企業にとっては重要な投資先だ。シーメンスはメルケル首相の訪問に合わせて同国の国有鉄道Temir Sholyの近代化を請け負うことで基本合意した。流通大手メトロは業者向けの販売店キャッシュ&キャリーの同国第1号店を10月に開設。今後数年でさらに10店舗を新設する。

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