ナメクジや昆虫など土の中に住む小さな無脊椎動物が、野原の植生で重要な役割を果たしているとの調査結果を、ヘルムホルツ・環境研究センター(UFZ)などの研究チームがまとめた。カタツムリや昆虫は農作物を食い荒らす「害虫」のイメージが強いが、生命力の強い植物に害を与えることで弱い植物が生き延びるチャンスを広げるなど、多種共存の維持・促進に役立っているという。
\UFZ、マックス・プランク生物地球化学研究所、イェナ大学、ポツダム大学の共同研究チームは、土中の無脊椎動物が植生に与える影響を調べるため、ドイツ中部のフランケンヴァルト山地とチューリンゲン粘板岩山地(Thueringer Schiefergebirge)の標高500~870メートルの範囲にある草地で5年をかけてフィールド調査を実施。調査対象のフィールドに生える植物の種類をすべて調べた後、昆虫・ナメクジ駆除剤を(1)土中に散布した区画(2)地上の植物にのみ散布した区画(3)全く散布しなかった区画――に分けて植生を比較した。
\この結果、駆除剤無散布の場合と地上散布のみの場合では生息する植物の種類に大きな変化がなかったが、地中に散布した土地では植物の種類が平均10%減少したほか、特定の植物が勢力を伸ばすなど植生のバランスが変化していたことが確認された。また、殺虫剤を播いて虫を除去しても生産されるバイオマス量は増えなかったという。
\今回の研究結果は『Ecology』誌(6月号)に掲載された。
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